就活は大変! なのに「就活が大好きな就活生」がいる不思議サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)

» 2012年10月01日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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 彼らは、学生が主催する「就活支援講座」なるものに足を運ぶと必ずいます。自分たちの後輩に自分たちの経験を伝えたい、と、手弁当で就活支援を行っているのです。講座では、自分の経験を話すのはもちろん、それぞれの企業の採用担当者の思惑や、それに対する対処法、キャリアについて、人生と仕事の関係、イマドキの新卒採用の問題点、ミスマッチによる早期離職についてなど、就活ビギナーである後輩たちに、自分たちの知っている知識を全力で話します。それが正しいかどうかは別にして。後輩たちの多くは、初めて聞く話ばかりですから、感心してメモを一生懸命取っています(メモを取らずうなずいてばかりの学生も多いですが)。就活大好き就活生たちの多くは、そんなところで後輩の支援をしているヒマはないはずなのですが、せっせと足を運び、場合によっては複数の団体や会場を掛け持ちしてまで、就活に携わり続けます。そう、彼らは「就活」そのものが大好きなのです。

 「こんなところにいないで、社会人として必要とされそうな知識を勉強しておくとか、学生時代にしかできないことをやっておくとか、そういうことはしないでいいの?」と質問しても、ピンと来ていない様子。「自分たちは人の役に立つことをしているし、人に自分の経験を伝えることは良いことだから、きっと社会に出ても役立つはずだ」と口を揃え、就活から離れようとしません。極端なケースになると、卒業して社会人になっても、なお就活にかかわり続ける人たちが出現するのです。別に人事系の仕事をしているわけでもなく、単に就活が好きなだけ。ただ、本人たちは就活が好きという自覚はないでしょう。「困っている人の役に立って何が悪いのだ」と怒られそうな勢いです。

 彼らの多くは採用担当者からフィードバックを受けたわけでもなく、ただ内定をしたという事実と、就活に取り組んだという経験しかないのですが、それをベースに「成功体験」として、さまざまなことを後輩に伝授します。後輩たちの多くは「話を盛っているなぁ」とか「この人、何で上から目線なの?」という感じで話半分に聞いているのですが、中には「素晴らしい」「就活って大事、やり方を間違えると大変だ!」と、裏打ちのない成功体験に踊らされてしまう「新・就活生」も生み出されます。さらには「自分も内定を取ったら、こういうところで後輩たちに話をしたい!」と、変なモチベーションを持ってしまう就活生まで出現するわけですから、もう訳が分かりません。

 就活が好きな就活生という存在が、悪いということではありません。むしろ、世間の人の多くは「就活生ってかわいそうだね」と思っているはずです。でも実は、就活が大好きで、そこから離れられない学生もいる、という側面を知っておいてほしい。それを加味しても、やはり「就活から離れられない元・就活生」を作り出している新卒採用は、少しおかしい。そして、その犯人たちの存在も明らかにする必要があるなと、ひずんでしまった新卒採用の周辺に身を置くものの一人として、ここでつぶやいてみるのです。

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