ヤミ金に頼ってしまった、とある業者の話「弱者」はなぜ救われないのか(最終回)(1/3 ページ)

» 2012年09月28日 00時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

「弱者」はなぜ救われないのか:

 この連載は書籍『「弱者」はなぜ救われないのか―貸金業法改正に見る政治の失敗―』(著・増原義剛、出版社・きんざい)の中から、田村建雄氏が書かれたルポを抜粋、再編集したものです。

 ヤミ金の過酷な取り立てにより自殺や一家離散に追い込まれた人々が社会問題となり、これに呼応する形で生まれた改正貸金業法が2010年6月に施行されてから約2年が経ちました。当時、その法律立法に当事者として携わった元自民党・金融調査会小委員長である増原義剛氏が今その問題点を振り返り、誤った改正に至った経緯を明かした書籍になっています。


ヤミ金に頼らざるを得なかった造園業者

 都内で造園業を営むC(56)。「かつて事業資金調達のためヤミ金に30万円借りて利息を10日で3割の10万円を付けられ合計40万円を返済した経験が1度だけある」と語りだした。

 「商売を始めたバブル前は信金や銀行でカネを借りていた。1回で300万円借りて月に15万円返済。いくらでも融通がきいた。大きな仕事が入ると注文書と見積書をもっていき『いつ終わるの』『1カ月後』で短期でプラスα借り増せた。何の不自由もなかった」。

 Cは、腕が良かったためか2005年ごろからマンションのモデルルームの造園を請け負うことが多くなった。このころは社員15人ほどを使い、年商も億単位に伸びた。

 造園というのは現金商売だ。工事で現状の庭を壊したりすると産業廃棄物が出る。これらの廃棄物から残土処分まですべてキャッシュ主流でテキパキとこなしていく。マンションディベロッパーの下にモデルルーム専門業者があり、そこから仕事がくる。工事閉め後、70日後支払いとかが多い。そのお金が入る前に、残土処理とか諸々はCの会社が現金で先払いする。そのためには工事の規模によっては手持ちのカネだけでは不足で、まとまったカネが必要となることが多い。モデルルーム造園でも大きな工事は1000万円からのカネが動く。

 「銀行で気軽に借りられていたうちは良かったが、そのうち銀行経営が不安定になり資本の増強、不良債権処理が大きな課題になると銀行融資がピタリと止まった。次に頼ったのがノンバンク。年利30%から40%の商工ローン的なところから借りるようになった。金利が高いというが、100万円借りて翌月で104万円とかの世界。70日後には必ずカネが入るので、そんなに高い金利とは思わず重宝して使わせてもらっていた」。

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