「プロゲーマーという職業に希望を」――格闘ゲーマー・梅原大吾氏の挑戦(5/5 ページ)

» 2012年09月27日 11時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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「趣味でゲームをやることはない」

――ゲームセンターにはたくさんのゲームがありますが、そもそもなぜ格闘ゲームにはまったのですか。

梅原 当時(1990年代前半)、新ジャンルだったということと、リアルタイムで競争できるゲームというのはあまりなかったんですね。(1人用の)シューティングゲームでスコアを競うものはありましたが、じゃあ(同時に)戦ってくださいといって競い合うゲームがほとんどなかったので、そこが性格に合ったんだと思います。

――最近はカードゲームなど、リアルタイムで戦うゲームがいくつか出てきていますが、そういうゲームはプレイしないんですか。

梅原 格闘ゲームのプロゲーマーということで知名度も上がりましたし、スポンサーも付いているので、心の中でのメインは格闘ゲームのつもりです。今回の『ガンスリンガー ストラトス』のように、オフィシャルサポーターという形をとったりしない場合は、格闘ゲームをプレイしようと思っています。

――格闘ゲーム以外はやっていないということなんですね。

梅原 そうですね。趣味でゲームをやることはないです。一切ないです。そんなヒマがあったら、格闘ゲームか『ガンスリンガー ストラトス』のどちらかをやります。

 例えば、ロールプレイングゲームやシミュレーションゲームは仕事に関わっていないゲームなので、プロになってからは一切プレイしていないですね。プロゲーマーになる以前は気晴らしでやったりということはありましたが。

『勝ち続ける意志力』

――著書『勝ち続ける意志力』の中で「99.9%の人は勝ち続けられない」とあったのですが、勝ったらやめるという人も多いと思うんですね。逆に勝ち続けようと思えるモチベーションは何なんだろうと思ったりもするのですが。

梅原 格闘ゲームが1人用、例えばシューティングゲームのハイスコアを競うとか、そういうものであれば「自分が一番だ」と認識した時にやめちゃったと思いますね。ただ、人と人なので、その人と人との勝負を突き詰めていくと何かあるんじゃないか、明確な目的があったというよりは、何となくぼんやりと何かあるんじゃないか、人間的に成長させてくれる何かがあるんじゃないかというものを信じて、プロゲーマー以前、ゲームを(一時的に)やめてしまう直前まではやっていました。

――いろんな攻略を試して、試すところがなくなったら僕ならやめてしまいそうです。

梅原 ゲームの攻略という意味では掘り尽くされているゲームもあると思いますが、やっぱりそこに人が関わってくるので、戦略の立て方とか、どういった駆け引きがどういったタイプには有効なのかとか、そういう勉強や発見というのはずっと続いていきます。なので、ゲームが煮詰まってしまっても、「やることがないな」とか「つまんないな」と思ったことはないですね

――一時期、格闘ゲームをやめて、麻雀に注力していたということですが、麻雀の考え方が格闘ゲームで役に立ったことはありますか。『勝ち続ける意志力』を読んで、梅原さんの考え方が麻雀の雀鬼流※の思想に通じるものがあるとも感じました。

※雀鬼流……雀士の桜井章一氏が設立した雀鬼会のメンバーの麻雀の打ち方。さまざまな縛りを設けて麻雀を打つことで、精神修養を目指している。サイバーエージェントの藤田晋社長も学生時代、雀鬼会に通っていた。

梅原 特に雀鬼流を意識しているということはないですが、もしかしたら近い考えかなという気はします。プロ意識とか、専門にするとはどういうことなのかとか、そういう視点は似ているのかなという気はしますね。

――汚いことをせずに、ど真ん中を進むことが自分の成長につながるとか。

梅原 そうですね。長く勝とうとすると、その手段は成長するしかないんですね。それははっきりしていると思います。その場その場で楽な方法というのは1〜2年の単位だったら何とかなると思いますが、10〜20年の勝負に勝ち切ることを考えると、結局は直球勝負の方があとあと楽というか、それは真理だと思いますね。

――今は楽ではない方法をとっていると。

梅原 常に楽なやり方はしないです。

 相手が知らないとひっかかるとか、相手がミスをすれば大ダメージを与えられるとか、そういうやり方はしないですね。相手はミスしないという前提、相手はこちらが知っていることを全部知っているという前提でプレイしていて、それは自分の有利をあえて消すような方法なので、やっぱり普通の人より苦労していると思いますね。

――最後に、プロゲーマーというのは恐らくモデルのない生き方だと思うんですね。そういう生き方をしていることについて、どのように考えていますか。

梅原 不安な気持ちもありますが、自分を客観的に見ると、何か「らしいな」というか、人のやったことを真似するのはあまり好きではないので、自分らしい生き方かなと思いますね。すごく毎日が充実しているので、自分に合った生き方なんだろうなと思っています。

――これからどういった生き方を目指していきますか。

梅原 とにかく行動を惜しまないということですかね。もともと行動力はある方だと思うのですが、年齢的にもいつまでプロとしてやっていけるか分からない状況でもあるので、時間を大切にというか、思い立ったらすぐ行動という風にしていきたいです。

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