巨人と松井、今もなお吹くすきま風臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)

» 2012年09月27日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

巨人に対する未練を完全に断ち切った10年前の出来事

 さて、当の松井はというと……。巨人復帰を考える気持ちはサラサラない。最大の理由は2002年オフ、巨人との間に大きなミゾが生じているからだ。メジャーリーグへ移籍するため、FA宣言することを決めた当時の松井は複数の巨人幹部に自分の決意を報告。育ててもらった巨人に感謝の念はあるが、どうしても長年抱いていた夢を実現させたい――。悩みに悩んだ末の決断だったことを明かし、深々と頭を下げた松井にある1人の幹部は顔を紅潮させながらこう吐き捨てた。

「一体誰のおかげで、ここまで来られたと思っているんだっ!」

 その瞬間、思わず松井は耳を疑ったという。自分を育ててくれた現終身名誉監督の長嶋茂雄氏から同じ言葉を浴びせられたのであれば、まだ納得できる。だが罵声の主は、球団の要職に就いて僅か1年足らずの幹部だ。「こんな人物に自分の人生の選択を否定されるなんて……。俺の巨人時代は一体何だったんだ?」と松井がしばらくの間、自問自答を繰り返し、放心状態になったのは無理もない。

 そして決定的だったのは“ドン”からの痛烈な一言だった。ヤンキース移籍が決まって日本を離れる際、「許されるならば、将来また巨人でプレーしたい」と涙した松井に当時オーナーだった渡辺恒雄球団会長は「戻りたいなら戻ればいい。ただし席があればな」と突き放した。この一件で松井は巨人に対する未練を完全に断ち切ったといわれている。

 2008年のオフにはかつて身にまとっていた背番号「55」がルーキーの大田泰示に渡った。巨人の“事実上の永久欠番”があっさりと譲渡されたことを受け、松井は顔色を変えることなく「非常にすっきりした」と決別宣言まで口にしている。

 「松井は巨人の現状を気にしてはいますが、自分が戻ってプレーしようとは微塵も思っていませんよ。ここ最近、彼は『メジャーで通用しなくなったから巨人に戻るという考えだけは持ちたくない。負け犬になって惨めな姿を巨人のファンの人たちに見せたくないんだ』と口癖のように言っています。それに加えて10年前にひと悶着あった巨人のトップ・渡辺会長との関係は、まだ完全に修復されていないようですしね……」と松井に近い関係者は語った。

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