“地獄の一丁目”にいるのは誰か――ヤミ金が増えている「弱者」はなぜ救われないのか(5)(1/5 ページ)

» 2012年09月26日 00時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

「弱者」はなぜ救われないのか:

 この連載は書籍『「弱者」はなぜ救われないのか―貸金業法改正に見る政治の失敗―』(著・増原義剛、出版社・きんざい)の中から、田村建雄氏が書かれたルポを抜粋、再編集したものです。

 ヤミ金の過酷な取り立てにより自殺や一家離散に追い込まれた人々が社会問題となり、これに呼応する形で生まれた改正貸金業法が2010年6月に施行されてから約2年が経ちました。当時、その法律立法に当事者として携わった元自民党・金融調査会小委員長である増原義剛氏が今その問題点を振り返り、誤った改正に至った経緯を明かした書籍になっています。


当のヤミ金は「ヤミ金は増えつつある」と

 2010年6月以降、生活現場ではヤミ金復活、増殖の気配はあるのかを利用者サイドで見た限り、確実に足音が多くなっている気配は先の現場ルポA子らのケースで記した(関連記事)。今度は貸す側のヤミ金サイドではどうなのか。

 私(今回の取材担当者:ジャーナリスト・田村建雄氏)は複数の元ヤミ金業者に会った。そのひとり、今は飲食店数店舗を経営するという50歳前後の男。紺のスーツをビシッと決めネクタイを着け語り口もソフトでエリートサラリーマンタイプで、とても元ヤミ金業者とは見えない。男は言う。

 「サラ金の貸すハードルが高くなれば、それだけヤミ金の世界が拡大する。しかしヤミ金業者も、回収がうまくいかない連中は、大変。実際、俺の知り合いでも数千万の金主をつかんで始めたものの、途中で警察のマークがきつくなって止めた奴もいる。また今は借主が図々しく、借りて一定の額になると弁護士や警察に駆け込み回収ができない例も増えている。百戦錬磨の図々しい借り手のなかには今が借り得とうそぶく奴もいる始末。だからヤミ金も大変だが、なかには、逆にここがチャンスと新たに始めて儲けている奴もいる。それとオレオレ詐欺の取り締まりが厳しくなりヤミ金のほうに越してくる奴もいる。だから全体としては増えている印象ということさ。また、手口も多様化し巧妙化し、さらに回収にも工夫がされている」。

 彼らは別にデータがあるわけではない。長年の勘で「2010年6月以降ジワりジワりとヤミ金業に復調、増加の兆しあり」との“臭い”を捉えているのだ。

 さてヤミ金サイドではなく、本当にヤミ金が増えているのではということを示す、もう1つの証言を示そう。

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