官僚からマスコミまでつかう、責任逃れができる「東大話法」ってナニ?窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2012年09月26日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 先日、ライターとして少しだけ手伝わせてもらった本が出版された。『もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く』(講談社α新書)

 著者は、東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授。そう聞くと、何やら東大教授による東大出身者に対する批判本のような印象を受けるかもしれないが、そうではない。

 実は、この本で扱っている「東大話法」というのは、オフィスや恋愛関係などで、ごくフツーにつかわれる“責任逃れの話法”をテーマにしている。傍観者という立場で公平を装いながら、ややこしく、そして権威たっぷりに自分が正しいと語ることで、どんなウソでも相手に納得させてしまう――。みなさんの周りにも、そのように口が達者な上司や同僚がひとりやふたりはいるのではないだろうか。アレだ。

 もともとこの言葉は、福島第一原発事故の時にあらわれた政府関係者、東電関係者、そして原子力の専門家たちがそろいもそろって、奇妙な言い回しで責任逃れをしていることに安冨教授が気づき、研究していたところ灯台下暗しではないが、自分の周りにも大勢いるじゃないかということで「東大話法」と名付けた。その理由は、「たしかに話法そものは一般的ですが、東大関係者が操るそれは、他と比べてずば抜けてうまいから」(本書より)だという。

 そう言ってもなかなかピンとこない方もいると思うので、本のなかで紹介されている例をひとつご紹介しよう。

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