コラム
» 2012年09月25日 08時00分 UPDATE

“信じたい心”と“懐疑の精神”――生き残りに有利な戦略とは (1/2)

これまで私たちは「人を信じること」が生き残りに有利であったことから、基本的に「人を信じたい」という強い欲求を持っています。しかし、多くの数の人々とつながるようになった今、適度な「懐疑の精神」を意識的に養うことが、生き残りにますます必要になっています。

[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 人類の歴史は400〜500万年程度と言われていますが、農耕が始まり、食料が安定して確保できるようになったのは1万年前ほどから。この食料の安定確保によって一定の地域での定住が可能となり、1つの社会(集団)の人口は、加速度的に増加していきます。

 しかし農耕開始以前に400〜500万年も続いた「狩猟採集生活」は、要するに「その日暮らし」です。常に食料(獲物)を求めて移動せざるを得ない状況でした。従って、1つの社会(集団)として維持できる構成員数は100人程度だったと考えられています。

 100人程度といえば、オフィスが1カ所の会社であれば、全員の顔と名前、そしてある程度はそれぞれの性格なども分かる人数ですね。私たちの祖先は、そんな100人ほどの小集団を形成し、お互いに助け合って厳しい自然環境を生き延びてきたのです。

 さて、こうした小集団に属する個人においてまず必要とされることは、「人を信じること」でした。

 なぜなら、人が教えてくれる、あるいは言い伝えや噂などとして聞く、

  • このきのこは食べてはいけない(食べて死んだ人がいるから)
  • あの谷には行ってはいけない(行方不明になる者が多いから)
  • けがをしたらこの草を治療に使うとよい(効果があったから)

 などといった話は、基本的に疑いを持たず、言われた通り信じることで難を逃れることができ、生き残りに有利であったからです。

 もちろん、「オオカミ少年」のように嘘をついたり、だます者もいました。しかし、そうした人間は「信用できないやつ」として誰も相手にしてくれなくなるため、じきに淘汰されてしまいます。ですから、ともあれ人の言葉(および行動)を信じていれば、おおむね間違いないということを私たちは、数百年万年の間に学習してきたわけです。

 ちなみに、「信じる」ということは言い換えると、人の言葉や行動を「真似する」ということでもありますね。従って、『影響力の武器』において、「説得テクニック」のひとつとして挙げられている「社会的証明の原理」(人の行動を参照して意思決定すること)の根底には、「人を信じたい」という欲求があると言えるでしょう。

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