風俗に身を落とし……待ち構えていた090金融のワナ「弱者」はなぜ救われないのか(4)(5/6 ページ)

» 2012年09月25日 08時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

 そのプロセス、弁護士に再び、相談に行く前にA子は、2度目の「不始末」を一挙に解決するために風俗嬢になるという大勝負に出たのだ。

 しかし、前述したように体調を崩したのと大震災後ということもあり、風俗街などからは客足も遠のいていた。その借金返済とまとまったお金を稼ぐことはできずに辞めざるを得なかったのだ。

 「風俗は本当に笑ってしまうほど稼げなかったわ……。でも今の時代、とにかくお金はかかるのよ。子どもの洋服も、そんなにボロを着せておけないし、おやつも必要。また、携帯代金とか、昔と異なる要素はたくさんあるのでお金って本当にかかる。……体調ももどってきたので、もう風俗とかではなくて普通に働きたい。将来に向けて貯金したいですよね。子どもが高校、大学と行くとしてもまとまったお金がないと難しいし。それには、やはり夫以外に自分も普通に働きたい。ふたりで共稼ぎしないと貯金もできない。でも今は子どもを見てもらえる場所がなかなか確保できない。出かけなくてはいけない時は父親に預けられるが、毎日となると無理。つまり、預けて働きたくても保育園が圧倒的に少なくて入れない。空いても、片親の子が優先だし。私も偽装離婚でもしたいぐらいだわ。私立保育園は月に7万円以上かかる。国も努力はしているのだろうが、低利でお金を貸してくれるところも、保育園も、手軽でスグに役立つものは何もない」。

 そうまくしたてると彼女は疲れたように首をふった。

 私は、思わず、こう聞いた。――10年前、20歳前後、今のようにヤミ金で苦しんだり風俗で働かざるを得ない自分を想像できたかと。彼女は力なく、しかし自虐を込めてこう言う。

 「ぜーんぜん、想像できなかったわね。楽しい未来しか描けなかったもの」。

 寂しそうに笑う。そして、彼女は突然立ち上がり「きょうはこの辺で。子どもが待っているので」と言うとカラオケボックスのドアを勢いよく開けて出ていった。

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