風俗に身を落とし……待ち構えていた090金融のワナ「弱者」はなぜ救われないのか(4)(4/6 ページ)

» 2012年09月25日 08時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

夫に知られたくなく深みにはまる

 私は彼女に尋ねた。

――なら、どうして携帯番号を変えるとか、着信拒否にするとかしなかったのですか。

 すると彼女はこう答えた。自分の携帯名義が夫のものであること。またヤミ金相手が自分に連絡できなくなると夫の携帯、勤務先、そして父親の連絡先も知られているので、夫や父親に向かうと思ったからだという。この時点で、夫や父親は、彼女がヤミ金に手を出しているのはまだ知らなかったという。それを知られないためにも携帯を着信拒否にはできなかったという。しかし、回収が脅迫的なものになった段階で、A子はいたたまれず役所の困りごと相談窓口に駆け込んだ。

 「たまたまその日、弁護士さんがきていて、すぐに相談にのっていただきました。話を聞いた弁護士さんは相手との示談、交渉を引き受けていただいたのです。そして1件、1件、相手と交渉していただき6件のヤミ金の問題はその時、無事解決したのです」。

 この時点でA子はまだ風俗で働いてはいない。そう、一度、ヤミ金問題が解決したが彼女は2011年の夏前、再びヤミ金に手を出してしまうのだ。

 「夫にヤミ金の話をしていないので携帯番号も変えなかった。変えると逆に怪しまれると思ったので。でも電話番号が同じだと連日のようにヤミ金から融資の誘いの電話が入るのですね。私の携帯番号がヤミ金業界に回ってしまったか、前の業者仲間がまた電話してくるようで」。

 再び生活資金不足のA子が、その執拗なヤミ金の誘いに乗ってしまうのに、そう時間はかからなかった。

 2回目のヤミ金の闇に踏み込んだA子が本当の地獄を見ることになる。それは私が彼女に取材した4カ月ほど前のことだったという。

 「次に借りたのは10日で5割の090金融でした。前に借りていたことを相手が知っていて、3割では貸せないという。5割でならいいというので……2万円ともう1件は3万円。10日で1万円、もう1件は10日で1万5000円の利子でした。借金は、アッという間にトータルでまた20万円近くになってしまいました。そこで再び別の弁護士事務所に駆け込んで今、それを交渉しているところなんですが……。相手がなかなか納得してもらえず交渉は大変です」。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.