風俗に身を落とし……待ち構えていた090金融のワナ「弱者」はなぜ救われないのか(4)(3/6 ページ)

» 2012年09月25日 08時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

 「お金をお貸ししますよ」という丁寧な、しかもやさしげな声のトーンだった。しかし、それは登録した社名とはまったく別。A子は最初、警戒したが電話の女は巧みな話術で融資に誘い込む。緊急でお金を必要としていたA子の警戒心は雪解けの雪のように和らぎ、いつしか必要な金額、口座番号、現住所、そして夫の勤め先、さらに健康保険証番号をサラサラと告げていた。そして、最後、健康保険証のコピーを相手の伝えた連絡先にファックスする。「審査をする」という相手の指示で電話を切って待つこと約1時間。

 「おめでとうございます。審査が通りました」と再び先の女がA子の携帯に電話をしてきた。

 「気がついたらサイトにあった金利なんて嘘、10日で3割という高金利で3万円を借りることになってしまいました。でもその時は、ノドから手が出るほど、とにかく3万円が必要だったのです」

 しかし、それが悪夢の始まりだった。

 「10日なんてアッというまに過ぎてしまいました。9日目に相手から『明日は期限の10日目ですがお支払いは大丈夫でしょうか。元金がダメなら、せめて金利の9000円だけでも』と電話がかかってきました。その9000円どころか私は新たに借りたいぐらい財布のなかは空っぽでした。でも、ハイというしかありません。翌日になりました。電話がきましたが相手には『払えません』というのが精いっぱいで電話を切りました。

 そんな時、まるで、その瞬間を待っていたかのように別の090の新しい番号が鳴ったのでした。またヤミ金業者で別の社名を名乗ってきました。でも、頭のなかでは最初の業者の借金、金利をどう払うかで一杯です。そこで新たにそこにも10日で3割で3万円を借り、そこからは坂を転げ落ちるようでした。1カ月で6社で20万円近く行っていました。とにかく連日、毎日のようにあちこちから回収の電話と新たな勧誘の電話でパニック状態でした」。

 彼女は次々と電話してくるヤミ金が、最初のヤミ金の仲間とウスウス知りつつもその罠にはまってしまう、と漏らした。

 回収の電話は最初は女性の声だったが、いつしか、だんだんダミ声の男の声に変わってきた。

 「『ふざけんな!』とか、『コラ、返せよ!』とか恐怖を感じるような電話が次々と入ってくるようになりました」。

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