「スキルを示しても無駄」な時代? 中年転職者の悲哀サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(1/3 ページ)

» 2012年09月24日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

連載「就活・転職のフシギ発見!」とは?

 就活や転職、若年層を中心としたキャリアについて、仕事柄仕方なく詳しくなったサカタカツミが、その現場で起きている「当事者たちが気付いていないフシギ」について、誰にでもスルッと理解できるように解説するコラム。

 使えない部下が毎年出現するのはなぜなのか? その理由も、垣間見えるはずです。

著者プロフィール:サカタカツミ

 クリエイティブディレクター。1967年生まれ。長年、就職や転職、キャリアに関するサービスのプロデュースやブレーンを務めている関係で、就活や転職には詳しい。直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』『就職のオキテ』がある。

 個人的に書いている就活生向けのブログは、なぜか採用担当者たちから「読んでいて心が痛くなります。ホントに辛いです」という評価を受けている。Twitterアカウントは@KatsumiSakata


(写真と本文は関係ありません)

 先日、昼下がりのとある喫茶店でのこと。前回、コロッケを食べていた編集長の吉岡綾乃さんは、今度はマンゴークリームワッフルにナイフを入れながら、私の連載についてこうコメントしました。

 「サカタさん、連載のタイトルを忘れてしまっていませんか? 『就活・転職のフシギ発見!』です。誠の読者は学生よりも、社会人のほうが多いんです。就活だけじゃなくて、転職のことも書いてくれなくちゃ困ります」

 「確かにその通り。ただ、就活周辺には問題が山積みしていて、それを解決するための問題提示がしたいと私は思い……」と言いかけた言葉をグッと飲み込みながら、私の頭に思い浮かんだのは中年転職者の悲哀でした。

 「やりたいことばかりをいっていてもダメ」――彼らの悲しい現実、あなたは最後まで目を背けずに読むことができますか?

就活生は「やりたいこと」を問われるけれど

 学生は就活が始まると、それこそしつこいくらいに「あなたのやりたいことは何ですか?」と面接官に質問されます。もう、ずっと聞かれっぱなしです。本来は「やりたいこと=やりたい仕事」ではないはずですが、そんなのお構いなし。ひたすら「やりたいこと」を考えさせられ、なんとかひねり出し、自分の経験から適当につじつまを合わせて自分についてアピールをし、やっとのことで社会に出るのです。

 社会に出れば、今度は「自分で考えて行動しなきゃダメ」とか「キャリアについて先まで見据えなければ」とか「スキルアップは必須ですよ」などと追い立てられて、自分がやりたいことと、仕事とを混同しながら、ある一定の年齢に達することになります。さて、問題はその先です。

 出世していて、社内で確固たる地位を築いている。なくてはならない存在であり、自分の代わりになる人はいない――そういう人なら問題はありません。ですが、そんな盤石な状態ではなく「給料の高い自分は、経営が危なくなったら真っ先にクビを切られる存在だな」と自覚している人も、正直、少なくないと思います。早期退職をやんわりと勧められる、同期が配置転換をされた……そんなことに気がついたりすると、いても立ってもいられなくなり、そして転職を視野に入れ、キャリアの棚卸しなるものを始めたりするのです。

「仕事は部長」なんていう人は、もういない

 こういう話を書くと、必ず出てくるのが「『あなたは何ができますか?』と質問すると、『部長をしていました!』と答える人がいるので困る」というエピソードです。

 話としては面白いのですが、正直なところ、今のビジネス社会にこんな人はもういません。少なくとも、その程度の人に部長が勤まっていた時代は過去の話なのです。いまどき、転職を視野に入れているほとんどの人は、職務経歴書を作り、いままで仕事をしてきたことを文字にして、経験を可視化する作業をします。その中で、自分が身につけた能力やスキルと呼ばれるようなものを抽出し、自分のセールスポイントとしてまとめます。

 就活生のように、大した経験でもないことから無理矢理引っ張りだした能力ではなく、ある程度実績に見合った力なので、それなりに説得力を持つことになります。が、この作業をすることが、逆に転職する際に、自分自身の足を引っ張ることになるのです。

「中年の転職」と検索すると「難しい」「正攻法ではいかない」「年収が4分の1」など切ない文が並ぶ
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