「のんびりゆったり」はローカル鉄道を潰す杉山淳一の時事日想(5/6 ページ)

» 2012年09月21日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

ローカル線は最高時速80キロメートルで走れ

 地方では、クルマに対して鉄道の優位性は低い。そこで鉄道のメリットを強く打ち出すとすれば、「安全」と「スピード」につきると私は思う。「安全」は鉄道というシステムの要であり、現状では交通事故件数を比較するまでもなく鉄道の圧勝だ。

 では「スピード」はどうか。列車はクルマより速く走らなくてはいけない。線路と国道が並んでいたら、国道を走っているクルマよりも、列車はさらに速く走って、クルマを颯爽と追い越さなくてはいけない。速さを見せつけて、ドライバーに「列車のほうが速いな、次は列車で行こう」と思わせなくてはいけない。クルマのドア・ツー・ドアに対するデメリットを挽回する必要もあるので、列車には圧倒的な速さが必要だ。

 滝川発釧路行きの最長距離鈍行は、実に気持ちよくクルマを何台も追い越した。だから乗客に選ばれている。ローカル線を「景色を楽しみながらのんびり走ればいい」なんて思ったら大間違いだ。とにかくクルマより速く走り、移動手段として優位に立たなければならぬ。そうでなければ誰もがクルマを選び、列車に乗らなくなる。乗客がいない列車は廃墟と同じ。地域の生活圏から見放されている。

 列車のスピードを上げれば、ふだんクルマで移動する人も、目的地までクルマで行かず、クルマの行き先を最寄り駅に変更して、そこから列車を選んでくれるかもしれない。駅まで遠い場所に住む人たちにも、列車に接続する巡回バスを運行すれば列車を選んでくれるはず。つまり、列車のスピードがあって初めて、パークアンドライドやフィーダーバスなどの、「鉄道を基盤とした移動システム」が成功する。逆に言うと、なにをやったって列車が遅ければ話にならない。

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