アメリカ政府はウソをついているのか ビンラディン殺害の真実伊吹太歩の世界の歩き方(3/4 ページ)

» 2012年09月20日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

オバマ政権に対して非難の声

 こうした矛盾が露呈している中でも、『ノー・イージーデイ』の発表は、オバマ政権にとって決して悪いことばかりでもない。オバマ政権にとって、11月の大統領選前にオバマの「最大の成果」であるビンラディン殺害を大々的に扱ってもらうのは、決して損ではないからだ。そういう事情もあり、一部では出版前に出版差し止めに動くよりも、本を出版させてしまったほうがいいのではないのか、との見解もあったという。

 ただ『ノー・イージーデイ』の影響は、思わぬところにも波及しそうだ。というのも、イラクでのアメリカ軍爆弾処理班を描いた映画『ハート・ロッカー』の監督と脚本家がビンラディン殺害を題材にした映画を製作している。この作品では、オバマ政権や国防総省の全面的な協力により、監督と脚本家が作戦の機密情報を入手できていると報じられ、批判されていた。しかも当初、大統領選直前に公開される予定になっていたといわれ、オバマ政権に対して非難の声が上がっていた(結局、 現在では12月公開を目指しているようだ)。

 この映画は、オバマ政権側の都合のいい情報を元に製作されている可能性が高く、今回の『ノー・イージーデイ』の内容とは矛盾が生まれるだろう。もしかしたら『ノー・イージーデイ』の出版によって修正などが必要になれば、映画の公開が遅れるかもしれない。

 殺害作戦後、シールズのチームがオバマに会った際に、オバマはビンラディンを殺したのは誰か、と聞いた。だが彼らは答えなかった。それはチームの作戦だからだ、とマーク・オーエンは語っている。

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