“決意”が人を最も元気にする(2/2 ページ)

» 2012年09月19日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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プラスゾーンに突入できるほどのエネルギーを得るために

 意味とは、言い換えれば夢や志、目的といったものである。それを成し遂げようと「決意する」とき、人は元気になる。元気とは、その字のごとく、その人の元のところから湧き起こってくる気だ。その人が本来の自分になるためのエネルギーだ。

 何かとストレスが重くのしかかる昨今の仕事生活にあって、人びとはよく「癒やされたい」と願う。そして「癒やし」をうたう商品・サービスも花盛りだ。

 しかし、「癒やし」は病気や傷を治すことであり、あくまでマイナスの状態をゼロに戻す手当てでしかない。“やまいだれ”が付く字であるのはそういうことだ。

 いくら高価な「癒やし」の商業サービスを受けても、プラスゾーンに突入できるほどのエネルギーは得られない。通常のストレス負荷にさらされれば、すぐまたマイナスゾーンで疲弊することになる。

 もちろん、疲れた心身に癒やしは必要である。だが、中長期にわたって、本当に元気になっていくために何が必要か、そこを考えなければ、いつまでも「ストレス負荷→癒やし・憂さ晴らし」のサイクルをマイナスゾーンでぐるぐる回る生活を続けるだけになってしまう。

 では、本当に元気になるために必要なものとは何か──それは「決意」することである。意味を見つけ、そこに肚を決めて行動することが、人が一番元気になることなのである。

 確かにそこにはストレス負荷が生じる。しかし、それは「良いストレス」である。学術的には、ストレスには2種類あり、何か建設的な目的に向かう時のストレスは「ユーストレス(eustress):良いストレス」であり、やらされ感のあるときのストレスは「ディストレス(distress):悪いストレス」となる。

 また、時には失敗や挫折もあるだろう。だが、それは病的で不健全な落ち込みではない。自分を真の意味で蘇生させるための価値のあるプロセスとなる。苦しみのどん底にあっても、決意をした人間は「誓い」を立てることができるのだ。

 「決意のある人生」と「決意のない人生」を図で表してみた。

 「決意のない人生」(左側)は、疲弊ゾーンでこぢんまりと回るだけだが、「決意のある人生」(右側)は、元気ゾーンの住人となり躍動して回っていくこととなる。時にネガティブゾーンに入っていくが、それも人生の醍醐味の1つとして、許容できるほどの力強さを持つだろう。

 作家の村上龍さんは『無趣味のすすめ』のなかで次のように書く。──「趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出会いも発見もない。心を震わせ、精神をエクスパンドするような、失望も歓喜も興奮もない。真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクを伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している」。 

 ネガティブゾーンでこぢんまり生きるか。それとも、ポジティブゾーンで、大きな喜びも大きな苦しみも抱え込んでダイナミックに生きるか。それは、ひとえに「決意するか/決意しないか」による。(村山昇)

 →村山昇氏のバックナンバー

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