「弱者保護」がさらなる弱者を生む、という構図「弱者」はなぜ救われないのか(2)(2/3 ページ)

» 2012年09月19日 08時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

 ところで、改正貸金業法の立法を検討していた当時、自民党小委員会でどの程度具体的なデータをもとに政策の企画立案をしたかと振り返れば、実際のところ利用者の声も聞けなかったように、かなり不十分であったと思っている。

 例えば、「新たな多重債務者」を出さない点に力点を置きすぎたことで、既存の債務者の実情を調べずに「総量規制」を決めた。「総量規制」が既存の債務者に適用されるのは法律が完全施行される3年あまり後に発生する新規融資からであり、その間に不具合は調整されると思っていた。しかし、完全施行直前の2009年に行われた調査では、約半数が収入の3分の1を超える借り入れを受けていたことで、「総量規制」の対象となることが判明した。改正時の見込みは大きく外れ、失敗に終わったことを大いに反省しなければならない。

 それに、もう1つ重要なことだが、本来「多重債務者問題」という社会問題に対しては、経済原則の働くビジネスの側面と、社会福祉政策の側面とがあり、対策も分けてアプローチしていかなければならない。しかしながら、自民党金融調査会という立場の限界から、我々としてなかなか経済的側面からの対応を超えることができなった。

 「多重債務者」の問題のなかには、貸し手側の問題だけでなく、そもそもとても返済能力があるとは思えないような方が利用者に含まれているという借り手側の問題も多々存在している。そういった利用者は本来であれば生活保護、生活福祉資金貸付などのセーフティーネットの分野に誘導していくべき借り手であり、そのような対策をもっと真剣にやるべきであった。政府に働きかけて「多重債務者対策本部」を設置させ、さらに私が内閣府の副大臣の時には「消費者庁」を新設(全党一致)した。だが、今現在外から見ている限り、消費者庁が中心となりながら、国民生活センターや地方の消費生活センター、法テラス、社会福祉協議会、警察庁、金融庁、貸金業協会等がネットワークを張って、問題ある借り手をセーフティーネットへ誘導する対策に努力しているとの動きは聞いていない。

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