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» 2012年09月19日 08時00分 UPDATE

「弱者」はなぜ救われないのか(2):「弱者保護」がさらなる弱者を生む、という構図 (1/3)

改正貸金業法の施行を受け、貸金業者はわずか6年で6分の1に激減した(2006年3月末に1万4236社→2012年3月末に2350社)。仕事があるのに、融資を受けられないがために仕事を請けられない……。こんなケースが出てきているのだ。

[増原義剛,Business Media 誠]

「弱者」はなぜ救われないのか:

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 この連載は書籍『「弱者」はなぜ救われないのか―貸金業法改正に見る政治の失敗―』(著・増原 義剛、出版社・きんざい)から抜粋、再編集したものです。

 ヤミ金の過酷な取り立てにより自殺や一家離散に追い込まれた人々が社会問題となり、これに呼応する形で生まれた改正貸金業法が2010年6月に施行されてから約2年が経ちました。当時、その法律立法に当事者として携わった元自民党・金融調査会小委員長である増原義剛氏が今その問題点を振り返り、誤った改正に至った経緯を明かした書籍になっています。


「弱者」はなぜ救われないのか・バックナンバー:

 →ヤミ金被害は、本当に減っているのか?(1)

 →第2回、本記事


多重債務問題のその後

 それでは、改正貸金業法のそもそもの立法趣旨であった多重債務者問題は、果たして解決したのだろうか。

 多重債務者の定義は5社以上の借り入れがあるかという形式的要件で決めていた。しかし、実際のところ、返済の可能性はその人の借り入れしている社数のみと必ずしも相関するものではない。3社であろうが2社であろうが、あるいは1社であっても返済不能に陥る債務者は発生しうる。

 また、日弁連は「金利が高いから多重債務に陥る」と主張してきた。だが、果たして金利が多重債務の原因なのだろうか。

 実は、返済不能に陥るかどうかは社数からだけでも金利からだけでも判断はつかず、金利と支払い能力の関係をきちんと見極めることで判明してくるものである。いわゆる「破たんの臨界点」といわれる一線を超えるかどうかを見る必要がある。

 これは当然の話のようであるが、その人が破たんするかどうかは単に金利が高いかどうかではなく、借りたお金に対してその人の返済能力がどの程度あるかという関係で決まってくる。つまり、1カ月に返す利子の金額と1カ月で返すことのできる金額とがちょうどつりあっているところで、もし返済可能金額が支払利子の金額を下回ってしまうと「破たんの臨界点」を超えるという意味だ。(出典・水澤潤著『2010年6の月、500万人が夜逃げする』講談社)

 月5万円返済できる人にとって、改正前の29.2%の金利下で返すことのできる限度額は205万円。これが改正後、例えば15%に下がった金利で借りることのできる限度額は400万円に増える。この人にとって、この金額を超えて借りてしまえば実は「破たん」なのだ。

 この考え方ではっきりと分かることは、返済能力が一定であるならば、金利が下がることで借り入れできる限度額は増えるということだ。しかし、その限度額を超えるところまで借りてしまうような破たん予備軍は、何社からも借りる「多重債務者」という言い方よりも「過重債務者」という言葉がふさわしいと思われる。

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