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» 2012年09月19日 08時01分 UPDATE

佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係(6):編集者が認めれば「良い仕事」……といった時代は終わり? (1/3)

ライターが書いた文章は、プロの編集者が認めなければ世に出すことは難しかった。しかしネット環境が整った今、こうした関係にも変化の兆しがうかがえる。

[土肥義則,Business Media 誠]

佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係:

 少子・高齢化に歯止めがかからない日本市場は、「縮小していくのみ」「よくて横ばい」といった見方が強い。企業は沈みゆく市場から抜け出し、グローバル化の中で新たな“財宝”を手にしようとしている。製造拠点を海外に移転したり、海外との取引を増やしたり、社内公用語を英語にしたり――。

 こうした一連の動きによって、私たちの働き方はどのように変化していくのだろうか。また企業が巨大化すれば、私たちの生活は充実するのだろうか。この問題について、ITやメディア事情に詳しいジャーナリストの佐々木俊尚さんと、アップルのどん底時代と黄金時代を経験した松井博さんが徹底的に語り合った。全9回でお送りする。


第三の起業ブームが起きている

yd_sasaki6.jpg 佐々木俊尚氏

佐々木:今、第三の起業ブームが起きているのではないでしょうか。第一次が1990年代のネットワークの頃で、ライブドアや楽天などが登場しました。第二次が「Web 2.0」という言葉が出てきた頃で、はてなやmixiなどが起業した。そして今は第三次で、1980年代半ばくらいに生まれた若者たちが、特に社会起業系を立ち上げている。あとは個人で起業したりしている。

 最近起業した彼らに会ってみると、“濃く”ないんですよ。しゃべっていると、とても気持ちいいことに気づきました。1990年代に起業した人たちに取材などをして、親しくさせていただいている人はたくさんいるのですが、彼らは「会社を大きくしてやるぞ!」といった毒気が強い。私のようなとりあえずフリーランスで、とりあえず自分の食い扶持だけ稼げればいい……といった人間からすれば、取材だから話は聞くけど、ついていけないなあと感じるんですよ。

 しかし今の若者は等身大でやっている、といった感じがしますね。立ち上げた会社をあまり巨大化しないで、枠組の中で仕事をする。または社会に対する価値を重視しています。だから話を聞いていて、気持ちがいいんですよ。

 今は価値や共感のようなものがないと、モノがなかなか売れなくなっているので、彼らには追い風が吹いている。また彼らもそうした空気を察知をしていて、そのうえでビジネスをしているのかもしれません。

松井:「YouTubeアーティスト」と呼ばれる人たちがいますが、彼らの中には大手のレーベルとは契約しない人がいます。YouTubeに新しい歌をアップすれば、たくさんの人に聞いてもらえるので、それでいいと思っている。自分たちでCDを作って、それをコンサートでしか売らない。あとはiTunesなどで曲が買えるだけ。

 YouTubeアーティストでデビッド・チョイという人がいるのですが、彼はFacebookで「オレのファンに聞きたいことがあるんだ。お前らオレの曲買ってくれた? それともどっかからダウンロードした?」などと書いていました。で、半分くらいの人が「ごめんなさい、どっかでダウンロードしました」と書いていました(笑)。それがすごくおかしくて。

 でも「コンサートに行ったときにはCDを3枚買ったから許して」って書いている人もいた。このとき、いまはCDを売って儲けるのではなく、コンサートで儲けるビジネスになったんだなと思いましたね。

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