家庭用太陽光発電、何年でモトがとれる?(1/3 ページ)

» 2012年09月14日 11時00分 公開
[Business Media 誠]

 東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故以来、日本のエネルギー政策の見直しを求める声が大きくなっている。日本各地の原子力発電所が稼働を停止する一方で、太陽光発電を中心とする再生可能エネルギー開発が加速し、次々とメガソーラー発電所が建設されている。

 同時に家庭用の太陽光発電システムの普及も進む。国内では、シャープ京セラ三菱電機パナソニック東芝ソーラーフロンティアといったメーカーがしのぎを削っている。

 家庭用太陽光パネルは設置後10年、20年と長い付き合いになるもの。設置する屋根の形や広さにも左右されるが、導入価格は100万円以上になる。果たしてこの初期費用、何年くらいで「モトがとれる」のか。

カタログスペックからは見えてこない本当の実力

 太陽光パネルのカタログには、パネルの最大出力や変換効率、保証期間などが並んでいる。中でも変換効率というのは、パネルが受ける光エネルギーを電気エネルギーに何%変換できるのかという数値で、比較時の目安の1つといわれてきた。

 しかしこれは特定の環境下において得られた数値を公式に当てはめて導き出した数字。実際の発電量は、日照量(時間)、日射量(強さ)、温度、角度・方角、影の影響という条件によって異なってくる。

 「同じ設置条件の中で、各社の太陽光パネルを並べてみたら、実際にどれだけ発電するのだろうか」――沖縄県で太陽光発電に関する設計、施工、メンテナンスを手掛ける「琉球てぃーだ」の菱田剛志社長が長年抱いていた疑問だ。

 そこで2011年10月の事務所移転を機に、屋上にシャープ、三菱電機、ソーラーフロンティア、Qセルズ(ドイツ)の太陽光パネルを設置して、実発電量の計測を開始した。発電実績は月に1回のペースでFacebook上に公開している。

 およそ1年の継続調査によって分かったのは、ソーラーフロンティア製パネルの実発電量の多さだ。ほかの3社よりも10%ほど発電量が多く、メーカーが提供するシミュレーション値と比較しても高い数字を出している。

太陽光発電 琉球てぃーだにおける計測データ(2012年8月28日時点)。棒グラフは実測値、折れ線グラフはメーカーによるシミュレーション値。縦軸の単位はキロワット時(提供:琉球てぃーだ)

 菱田社長は「おそらく光照射効果が大きいのでしょう」と推測する。ほかのメーカーがパネルの素材にシリコン系(シャープと三菱電機は単結晶、Qセルズは多結晶)なのに対して、ソーラーフロンティアのパネルはCIS(銅、インジウム、セレン)薄膜太陽電池を採用している。このパネルは、一定時間光に当たると出力が上昇していくという特徴を持つ。

 あくまでも沖縄県での測定データではあるが、太陽光パネルの性格の違いが明確に表れた。また、1年を通じての季節変動が、太陽光パネルの発電量にどのような影響を与えるのかが分かるのも消費者にとってありがたい情報だろう。

琉球てぃーだで設置している太陽光発電システム一覧
メーカー名 種別 設置パネル(キロワット) 変換効率(%) 実発電量(キロワット時)
ソーラーフロンティア CIS系 2.88 11.4 345.09
シャープ シリコン系(単結晶) 2.66 16.5 280.09
三菱電機 シリコン系(単結晶) 2.80 14.1 300.50
Qセルズ シリコン系(多結晶) 2.88 14.4 307.90
設置パネルの出力は公称最大出力数値、実発電量は琉球てぃーだでの2012年6月の実績値
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