ヤミ金被害は、本当に減っているのか?新連載・「弱者」はなぜ救われないのか(1/4 ページ)

» 2012年09月14日 08時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

「弱者」はなぜ救われないのか:

 この連載は書籍『「弱者」はなぜ救われないのか―貸金業法改正に見る政治の失敗―』(著・増原 義剛、出版社・きんざい)から抜粋、再編集したものです。

 ヤミ金の過酷な取り立てにより自殺や一家離散に追い込まれた人々が社会問題となり、これに呼応する形で生まれた改正貸金業法が2010年6月に施行されてから約2年が経ちました。当時、その法律立法に当事者として携わった元自民党・金融調査会小委員長である増原義剛氏が今その問題点を振り返り、誤った改正に至った経緯を明かした書籍になっています。


「前門の虎」「後門の狼」に挟まれたノンバンク

 改正貸金業法のもと、年収の3分の1以上の借り入れを制限する「総量規制」が2010年6月18日の完全施行により導入された(関連記事)

 「貸金業規制法」の改正を検討しはじめた頃から、消費者金融の利用者は日本の総人口1億2000万人余りのうちの約1割、約1200万人という爆発的数字に達していた。うち、5社以上の消費者金融から融資を受けていた多重債務者が230万人おり、ヤミ金被害者を含むその多くの声がマスメディアで取り上げられる一方で、健全に利用していた者もまた1000万人いた。この数字は我々も想像もしていなかっただけに、その事態に驚き、ある意味で衝撃を受けたものだった。

 ところが、新たにもう1つ驚くべきデータが法改正後に明らかになった。「改正貸金業法」が完全施行され「総量規制」が導入されることになるちょうど半年前の2009年12月、日本貸金業協会により行われた「総量規制」についてのアンケート調査の結果、約5割の人が「総量規制」の対象となる年収の3分の1以上の借入者に該当していると判明したのだ。少なめに見積もっても500万人もの人たちが「総量規制」で2010年6月18日以降、新たなお金を借りられなくなる事態になりかねないという驚くべき調査結果であった。

 本来、弱者保護の観点から「新たな多重債務者を生まない装置」として導入されたはずの改正貸金業法であったが、結果的にはむしろ、お金を借りられなくなる「新たな弱者を生み出す装置」となりつつあった。完全施行により、「夜逃げ」寸前に追い込まれた人たちが「ヤミ金」に流れているという情報も聞こえてきている。

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