地方鉄道が、バスやトラックに負ける日杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2012年09月14日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 三江線の名前は、今年の春にJR東日本のプレスリリースに登場している。JR東日本は3月30日に、災害で不通となっている岩泉線のバス転換を発表した(参照リンク)。この時に、全国のJR路線で最も利用人数が少ない路線が岩泉線で、1日あたり49人。その次に少ない路線として三江線が挙げられている。利用人数は1日あたり83人である。岩泉線が運休中で、このままバス転換されるとすれば、三江線が最下位になってしまう。

 三江線は江の川の水運を鉄道に切り替えるため、そして三次で芸備線に接続して広島と結ぶ「陰陽連絡ルート」を形成するために計画された。まず1930年(昭和5年)に江津(当時は石見江津)と川戸を結ぶ13.9キロメートルが開業し、その後少しずつ延伸した。ただし難工事の区間が多く45年もかかった。全通は1975年(昭和50年)であった。

 江の川の水運が鉄道にシフトしたため、沿線の地域は一時的には活性化されたらしい。しかし、全通までモタモタしている間にクルマ社会がやって来てしまった。それでも三江線が存続した理由は、代替する道路が未整備だから、という理由だった。しかし現在、沿線には国道261号線と375号線、島根県道40号線が開通している。

 民家があるから道路が通ったのか、道路があるから民家が移ったのか。いずれにしても、これらの道路は民家のそばにある。一方、三江線の駅のほとんどは、民家のある地域の対岸にある。三江線は沿線の人々にとって、どちらかというと不便な鉄道になっている。

 また「陰陽連絡ルート」としても、広島へ直行せず三次へ迂回するため、あまり便利とはいえない。すでに国道261号線が広島への直行ルートで作られているし、山陰側の主要都市のひとつである浜田と、広島を結ぶ高速バスが16往復あって、浜田自動車道経由で最短2時間以内で走る。仮に三江線に特急を走らせたとしても勝ち目はない。そもそも特急を走らせたとしても速くは走れない。三江線は大半の区間が時速30キロメートル以下に制限されている。落石の危険があるためだという。原付バイク並の速度の列車に魅力はあるか。

三江線の車窓から。集落は川向うにある。駅に行くために橋を渡る必要がある

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