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» 2012年09月13日 08時00分 UPDATE

新連載・臼北信行のスポーツ裏ネタ通信:熱かったのは日本だけ!? 何も変わっていないワールド・ベースボール・クラシック (3/3)

[臼北信行,Business Media 誠]
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ダルビッシュ、岩隈、青木――うれしいのはメジャーのスカウトだけ

 代表選手の間にも日本と米国では大きな温度差がある。過去2回の大会でサムライジャパンのリーダーを務めた現ヤンキースのイチロー(当時マリナーズ)はWBCへの参加について「世界最高峰の大会で頂点を目指すことに野球界に生きる1人の男として、とても大きなロマンを感じる」と答えた。

 しかし米国代表として同大会に出場経験のあるヤンキースのデレク・ジーターは地元メディアに「WBCと、ヤンキースの一員として戦うレギュラーシーズン、一体どちらが大事かと問われれば、それは後者と言わざるを得ない。なぜならば私はヤンキースと契約を結ぶ選手だからだ」と明言している。両者のスタンスの違いは、日本と米国におけるWBCのそれぞれの価値観を象徴していると言っていい。

 MLBが主催でありながら、メジャー各球団の姿勢も決してWBCに協力的ではない。2009年の第2回大会では期間中、米国代表に選ばれていた5人の主力選手が負傷を理由に次々と戦線離脱。代表チームを離れ、それぞれの所属する球団のキャンプ地へ戻っていった。

 中でも露骨だったのはレッドソックスに所属していたケビン・ユーキリス内野手(現ホワイトソックス)とダスティン・ペドロイア内野手だ。2人は負傷した直後に球団側から呼び戻されると、そのわずか5日後にレッドソックスのオープン戦に強行出場。球団側とグルになっての「三味線疑惑」がかけられたのは言うまでもないだろう。

 WBCではプロサッカーのように所属球団に対する代表チームの拘束権がない。だから所属選手をWBCへ派遣することに難色を示すメジャー球団は自分たちの都合のいいようにコントロールができる。

 WBCに参加するメジャーの選手たちも大会優勝への意識は日本のサムライジャパンのメンバーたちよりも遥かに低く「レギュラーシーズンを前にした肩ならし程度のオープン戦」のような感覚で臨んでいるのが現状だ。

「MLBがWBCを開催する真の目的はメジャーリーグのグローバル化。米国だけでなくドミニカ共和国、ベネゼエラ、カナダなどメジャーリーガーが大勢を占める代表チームと日本や韓国などが戦えば、テレビ中継された対戦国ではメジャーリーグに注目が集まるようになる。さらにメジャー各球団のスカウトたちにとってもWBCは、メジャーで通用しそうな選手を発掘する格好の場となる。2009年の第2回大会でもダルビッシュ(レンジャーズ)や岩隈(マリナーズ)、青木(ブリュワーズ)ら後にメジャーへ移籍する選手たちの活躍が敏腕スカウトたちの目を光らせていた」(前出の関係者)

 WBCは「真の世界一を決める大会」とうたわれているが、主催者であるMLB幹部たちの本音は「メジャーリーグこそが世界最高峰のプロフェッショナル ベースボール リーグ」。

 彼らにとってはメジャーリーグよりも「格下」のWBCが、お膝元の米国内で盛り上がってもらっても困る。あくまでもWBC人気は米国以外で火がついてくれたほうが都合がいいのだ。日本国内でサムライジャパンの人気が高まれば高まるほど、MLBにも巨額のジャパンマネーが転がり込む。加えて「第2、第3のダルビッシュ」にまで目星をつけられるのだから、メジャーにとってWBCはとてつもなく「美味しい大会」と言えそうだ。

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