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» 2012年09月12日 08時00分 UPDATE

アニメビジネスの今:アメコミ市場は日本の10分の1、世界のマンガ市場を見る(後編) (1/3)

出版物販売の3冊に1冊がマンガという日本。一方、海外では、アメコミが有名な米国でさえも市場規模は日本の10分の1程度に過ぎないようだ。

[増田弘道,Business Media 誠]

アニメビジネスの今

今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。


 「出版物の3冊に1冊を占めるけど……危機を迎える日本のマンガ(前編)」では、出版物の3冊に1冊がマンガである日本の現状を解説した。では、世界のマンガ事情はどうなっているのだろうか?

 日本以外の国でマンガ(=コミック)が盛んなイメージがあるのは、やはりアメコミで知られる米国が一番だろう。特に最近はマーベル・コミック原作の映画が次々と公開されている。そのほかはフランスやベルギーといったフランス語圏でのバンド・デシネ、あとは韓国で最近盛んになりつつあるといった程度だろうか。いずれにせよ、アニメ同様、日本のマンガのライバルは米国ということになりそうだが、その現況についてみていこう。

アメコミの雄、DCコミックとマーベル・コミック

 米国のコミックスの内容は、風刺マンガなどを除き次の3つのジャンルに分けられる。

米国のコミックスのタイプ(『アメリカン・コミックス大全』参照)

1.1世紀以上の歴史を持つ新聞連載漫画(newspaper strip/「ピーナッツ」「ブロンディ」「ガーフィールド」など)

2.スーパーヒーローものを中心とするコミックブック出版のメインストリーム・コミックス(main stream comics/「スーパーマン」「バットマン」など)

3.マンガ家が個人で出版、あるいは小さな出版社から出ているオルタナティブ・コミック(alternative comics/「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」など)

 私たちが通常アメコミと呼んでいるのは、2番目のメインストリーム・コミックス。その歴史は1934年設立のDCコミックと1939年設立のマーベル・コミックという2つのコミック出版社とともにあったと言ってもいい。

 DCコミックは「スーパーマン」「バットマン」という国民的二大ヒーローコミックのほか、昨年映画化された「グリーンランタン」などの人気シリーズを抱える。一方、マーベルは「スパイダーマン」を始め、「超人ハルク」「X-メン」「アイアンマン」「キャプテンアメリカ」「アベンジャーズ」といった作品がある。

 ちなみにこの両社であるが、2000年代に入ってマーベルが映画に積極的に取り組むまでは、DCコミックの方が優勢だった。次表を見ると分かるが、DCコミックの方が人気キャラクターが早く生まれており、また親会社がワーナーということもあって、映画を中心とする映像作品が多かったからだ。

映像化された主要DCコミック作品(筆者調べ)

タイトル 概要
1 スーパーマン 1938年誕生以来、何度もテレビアニメーション化、テレビドラマシリーズ化、映画化されている国民的スーパーヒーロー。2013年にはリブートの新作映画『マン・オブ・スティール』が公開されることになっている。
2 バットマン 1939年から続く、こちらもスーパーマンに並ぶ米国の国民的ヒーロー。2005年の『バットマン ビギンズ』から始まったクリストファー・ノーランズによるリブート3部作は、2作目が北米歴代興行収入4位、この夏の3作目が歴代9位(9月現在)に入る大ヒットとなった。
3 グリーン・ランタン 1940年に登場した歴史のあるキャラクターだが、日本で有名になったのは昨年公開された実写映画『グリーン・ランタン』からである。

 一方、マーベルは「スパイダーマン」「ハルク」などのアニメーションやテレビシリーズをたまに見かける程度で、DCコミックと比べると正直地味だった。ところが、1998年の『ブレイド』の映画化を皮切りとし、2000年に『X-メン』、2002年に『スパイダーマン』といった作品が大成功。以降、それらの続編に加え、『デアデビル』『ハルク』『ファンタスティック・フォー』『ゴーストライダー』『アイアンマン』『マイティ・ソー』『キャプテン・アメリカ』などマーベル原作映画が次々と製作されたことでDCコミックとの地位が逆転した。

 そして、2012年には親会社となったディズニーが初めて配給した『アベンジャーズ』が歴代北米興行収入3位のメガヒットとなり、その差はさらに広がりつつある。このような状況を見るにつれ、米国のエンタテインメントのトレンドは映画から発信されるという事実を実感する。

映像化された主要マーベル・コミック作品(筆者調べ)

タイトル 概要
1 キャプテン・アメリカ 1941年誕生のマーベルで一番古い人気シリーズ。映像化作品が少なく、国の名前がキャラクター名ということもあり歴史の割には日本では馴染みが薄かった。それもあってか、2011年公開の『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』は日本で大苦戦した。
2 ファンタスティック・フォー 1961年に登場し倒産寸前だったマーベルを救った救世主。マーベルの原作を多数著しているスタン・リー初のヒットで、その後のスーパーヒーロー路線の礎となった作品。
3 ハルク 1962年誕生の異色ヒーロー。日本では1979年『超人ハルク』というテレビシリーズが放映されたのでマーベルコミックのキャラクターの中ではスパイダーマンに次いで認知度が高い。
4 マイティ・ソー 1962年デビューの古いキャラクターだが、日本では2011年に同名の映画が公開されるまでほとんど無名だった。
5 スパイダーマン 1963年以来、マーベルで一番人気を誇るキャラクター。アニメーションでのシリーズ化は多かったが、世界的にブレイクしたのは2002年の映画化からで、マーベル躍進の旗手となった。
6 アイアンマン 1963年登場。アニメーション化、テレビドラマ化がそれぞれ1回ずつと比較的地味な存在だったが2008年に映画化され、一躍有名キャラクターとなった。
7 X-メン 1963年に誕生したX-メンのトータル発行部数は5億冊と現在マーベル・コミックの中でも一番売れるシリーズとなっている。2000年から始まった映画3部作やスピンオフの『ウルヴァリン』は順調に推移したが、リブート1作目となった2012年『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』は期待度からすると物足りない成績に終わった。
8 アベンジャーズ 1963年に始まったキャプテン・アメリカ、マイティ・ソー、アイアンマンなどの異なるコミックのヒーローが集結して活躍するシリーズ。日本で言えば、『少年ジャンプ』のヒーローが同じマンガに登場するようなものだが、これは原作者が同じであり(スタン・リー)、かつ出版社が作品の著作権を所有するというアメコミのシステムがあるから成せる技だろう。
9 デアデビル 1964年にデビューしたこのシリーズも日本では映画が公開されるまでほとんど認知度がなかった。
10 ゴーストライダー 1972年初登場のアンチヒーロー。2007年にニコラス・ケイジ主役で映画化されたが、これがマーベル原作作品であるとはほとんど思われてなかった。
11 ブレイド 1973年発刊のヴァンパイアハンターキャラクター。1998年から映画3部作が公開されたが、興行収入的にはいまひとつだった。
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