知恵を出せば仕事が増え、お金が回るかもしれない佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係(4)(4/5 ページ)

» 2012年09月12日 08時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

生活ができればいい

佐々木:以前、「ワーキングプア」という言葉が注目されるようになってきたころに、NHKの番組で、地方の商店街で紳士服の仕立てを行う人が紹介されていました。お店は、60歳代のおじさん1人しかいません。バブル経済のときには職人さんを何人も雇って、年間300着ほどスーツを作っていたそうです。しかし、今では仕事がなくて、あっても月に1〜2着ほど。しかもズボンの裾直し。収入はほとんどない、といった話をしていました。

 この番組を見たとき「もったいないなあ」と思いました。スーツを仕立てる技術があれば、Webサイトをつくって、例えば秋葉原でコスプレをしている人たちに「仕立てますよ」と伝えればいい。知恵を使えばワーキングプアにならなくてもすんだかもしれないに……と思いましたね。

松井:私の知り合いで、服の仕立てをしている会社に勤めていた女性がいます。彼女はいろいろな資格を取得して「自分で仕立ての会社を起こしたい」と言っていました。そして会社を立ち上げ、お年寄り向けにオシャレな洋服をデザインして、つくっていました。彼女はネット関係にはうといのですが、それでも口コミで噂が広まって。いまでは、かなり稼いでいるようですね。

 私は彼女に「お店のWebサイトをつくってあげますから」と言ったんです。でも、彼女は「ネットってなんだかよく分からなくて怖いし……」などと言っているので「もったいないなあ……」と思っていました(笑)。でも彼女の成功を見ていると、ニッチな世界かもしれませんが、世の中にはいろいろな可能性があるんだなあと思いましたね。

佐々木:中国や東南アジアに行けば、なにがなんだかわけの分からないモノが路上で売っていたりしますよね。饅頭とか日用雑貨とか。でも、それでいいんじゃないかなあ。いまはそういう小商いをグローバルプラットフォームを利用して、もっと効率的に洗練されたかたちでできるようになってきていますから。

松井:その人が生活できれば、それでいいですよね。私は今、米国で保育園を運営していますが、始めるにあたって「ニッチなことをやる!」と決めていました。

 シリコンバレーには教育熱心な人が多く、保育園でも「勉強教えます」といったところしかないんですね。小学生にもなればバイリンガルじゃないと肩身が狭い。2カ国語を自由に話せるのは当たり前で、3〜4カ国を話せる人もたくさんいる。

佐々木:どの言語を学ぶ人が多いのですか?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.