概算要求100兆円超、歳出削減できない国に未来はない藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年09月10日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

社会保障関連費をどう削るか

 財政再建するというのなら歳出を抑えるのが本筋だ。今回、特に注目されるのが厚労省の要求額が一般会計分で約29兆6000億円に達していることだ。もちろんそのほとんどは社会保障関連費である。国債費などを除く国のいわゆる政策経費は72兆円ぐらいだから、ほぼ4割は社会保障関連費ということになる。

 来年度でも1兆円を超える自然増があるが、社会保障関連費は毎年必ず増える。それは高齢者の数が増えるからだ。団塊の世代が70歳を超えはじめる5年後からは、急激にこの費用が膨らんでくるはずだ。それをいったいどうするのか。3党合意で決まっている国民会議の大テーマは、この増え続ける社会保障の費用を、どう削りこむのかという点にある。しかもそれは老人から大反発を食う覚悟でないと絞り込めない。

 あえて言えば、保険診療の年齢制限も必要かもしれないのである。つまりある年齢になったら自費診療以外の治療は行わないということだ。「姥捨て山」と言われてもしかたがないこの政策を、実現しようと本気で考える政党があるとは思えない。一方で増税して一方でこれほどドラスチックな社会保障の給付削減を行えば、次の選挙ではまず間違いなく負ける。

 もちろん老人医療費だけではない。生活保護や生活保護に伴う医療扶助も見直しの対象にしなければならない。最低賃金で働くより生活保護をもらった方が得という社会も、生活保護を受けている人を食い物にするビジネスが成り立つような社会もおかしい。

 このような点を今のうちに修正しておかなければ、5年後ぐらいには消費税を10%引き上げて20%にするなんていう話が出ていても驚かない。電気代は高くなり、消費者の可処分所得は減り、雇用も減り続けるような社会にしないためにも、負担を求めるべきところには負担を求めなければならない。それこそ政治家の仕事だと思うが、果たして民主党にも自民党にもそれだけ肝の据わっていて現実感覚のある人はいるだろうか。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.