概算要求100兆円超、歳出削減できない国に未来はない藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年09月10日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 それにしても日本という国はどうなってしまうのだろうか。野田首相が「待ったなし」といって民自公の3党合意までして成立させた消費税増税法案。それが通ったら来年度予算の概算要求は復興費も含めると合計で100兆円を超え、過去最大になった。カネが入ることになったから安心して使おうとでもいうのだろうか。

 民主党の仙谷政調会長代行があるテレビ番組で「欧州諸国を見よ」と言って、消費税増税が正当であることを強調していたが、使う方を絞らなければいくら国民からカネを集めても財政再建などできるはずがない。

 8月末に内閣府が出した試算では、政府が目標としている2020年度基礎的財政収支の黒字化は無理という結果が出た。ただこの試算は、日本経済について「慎重シナリオ」を前提としている。2020年度までの平均経済成長率は名目で1%台半ば、実質では1%強とし、消費者物価上昇率は2012年度にプラスとなった後、中長期的には1%前後で推移するというものだ(ちなみに楽観シナリオではそれぞれ名目3%、実質2%程度、消費者物価は2%前後である)。

 どの程度足りないのか。2020年度では国・地方の基礎的財政収支は15兆4000億円の赤字GDP(国内総生産)比でマイナス2.8%弱である。15兆円といえば消費税を5%さらに上げてもまだ足りないほどの金額だ。

 財政再建と口ではいいながら、民主党も自民党も票に直結する予算は削りたくないように見える。自民党が言う「国土強靱化」に10年で200兆円を投じるなどという話は、どこにそんなカネがあるのかという気がする。もちろん建設国債だから60年償還でいいというのだろうが、そういったことの積み重ねがGDPの2倍に達する公債残高だ。これが先進国では最悪の数字であることは周知の通りである。

 内閣府の試算でも2020年度末でGDP比209%の公債残高ということになっており、「安定的に低下させるためにはさらなる努力が必要」と書いている。

 財政再建など今やるべきことではない、景気浮揚こそ先決、と主張しているのはプリンストン大学のクルーグマン教授だが、日本の財政がもつのかどうか、投資家から見限られて長期金利が急上昇することはないのかどうかは、どうしても気になる。

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