悪者は誰? よく分からない社会になりつつある佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係(3)(3/6 ページ)

» 2012年09月10日 08時05分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

会社組織の究極な形

佐々木:有名な話ですが、フェイスブックには社員が3000人ほどしかいません。またPTPというベンチャー企業があるのですが、そこでは「SPIDER」という新しいテレビを作っているのですが、働いている人は20人ほどしかいません。製造業なのに。

松井:たった20人でテレビが作れてしまうのですね。

佐々木:ベンチャーでは社長が営業マンで、副社長が技術者……究極の形としてはこれで十分なのかもしれません。

 「アップルは国内で雇用を生み出していない。富を還元していない」などと米国では批判されていて、これに対しアップルは「いやいやこんなに雇用を生んでいる」と反論している。しかしこの議論は“空中戦”なんですね。アップルという企業内部ではあまり雇用を生んでいないのかもしれませんが、App StoreやiTunes Storeなどを含めて言えば、その外側では膨大な仕事を生んでいる。例えばコンテンツをつくるクリエイターなどですね。

 これまでは企業が雇用を生み出したり、富を還元することが当たり前でした。でも今は企業の外側まで考えなければいけない。そして内と外の境界線はどこにあるの? といったことがよく分からなくなっていますよね。

松井:エクソンモービルは、チャドやギアナなどで石油を掘っています。もう掘りやすいところがなくなってしまって、政情不安な国などで掘っている。そのことに反感を抱く人もいて、採掘中に攻撃されたりするわけですよ。攻撃されたときにどうしているかというと、現地の政府軍に守らせるんですよね。しかもそのお金がエクソンモービルから出ている。なので現地の政府軍が事実上エクソンモービルの軍隊と化しているんですよ。このような会社は、もう“帝国”のようなもの。札びらで叩いてそういうことができてしまうのですから。

 また、政情不安な国に「石油掘らせてください」と言えば、賄賂が横行する。そして石油の莫大な利益が一族にだけ入るという構造があります。

佐々木:自分たちだけ富めばいい、ということですね。

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