松井:もうちょっとこらえ性があってもいいんじゃないの? と思ってしまうのですが(笑)。日本人からすれば、10人部屋で寝泊りして、1日12時間も働かされれば、幸せではないですよね。でもフォックスコンで働く人は相応の幸せを感じている。なぜなら中国の田舎でいれば、地元の人と結婚して畑を耕やさなければいけないし、収入の上昇も見込めないから。フォックスコンで働けば、お金はもらえるし、転職できるチャンスがある。少しずつですが、給与をあげていくことができるんですね。
そうなれば故郷に帰る理由がなくなってしまう。こうした現象は、日本の昭和30年代に似ているなあと思ってしまう。働き口を求めて、地方から東京に出てきた集団就職のように。
佐々木:フォックスコンのような会社で働くことは大変かもしれませんが、そこには将来に対する夢があるといった感じですね。
松井:だと思います。中国ではそうした状況なのに、ひるがって日本はどうなのか。自殺者は年間3万人以上……しかもそれが10年以上も続いている。
佐々木:それがグローバリゼーションの現実なのではないでしょうか。日本は貧しくなって、政府の対応に不満を感じている人が多い。ただこれは日本だけの話ではなく、先進国では同じような現象が起きています。先進国が貧しくなる一方で、中国やインドでは中産階級が勃興していますね。つまり、トレードオフなわけですよ
松井:ですよね。日本人でも「外国で一旗挙げてやる」といったパワーがあれば、中国やインドに行って“コントローラー”のような仕事をすればいいんですよ。仕組みをつくる側になるのもひとつの手だと思うのですが、そうした人が日本にはあまりにも少ない。
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