「津波浸水想定区域」は今、どうなっているのか相場英雄の時事日想(1/4 ページ)

» 2012年09月06日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 8月初旬、私は家族サービスのために岩手県を訪れた。この間、同県の有名観光地に行くと同時に、すぐそばにある被災地にも足を伸ばした。「津波浸水想定区域」の標識の向こう側では、復興に向けた懸命の作業が続いていた。東北沿岸の被災地では交通の便は格段に良くなり、観光地を見たあとでも、現地の生の様子に触れることができる。秋の観光シーズンを前に、被災地を自分の目で感じてみることを勧めるために、今回は自身の経験を記す。

野田村に足を運ぶ

 中学生の息子の夏休みの課題を手伝うために、私は自家用車を岩手県北部にある岩泉町に走らせた。

 岩泉町には、山口県の秋芳洞、高知県の龍ヶ洞とともに日本三大鍾乳洞と称される龍泉洞がある。家族とともに約2時間、龍泉洞内部を回ったあと、私は沿岸部にクルマを走らせた。カーナビで野田村をセットすると、県道や国道を経て30分ほどで到着すると案内された。

 なぜ野田村を訪ねたかと言えば、昨年来の東日本大震災後の被災地取材では、時間的な制約から岩手県北部の地域を回っていなかったからだ。

 事前に地元紙・岩手日報のバックナンバーをチェックしてみると、野田村は比較的早い段階で住宅地周辺の瓦礫(がれき)が撤去された、と記されていた。

 だが、野田村は地元紙や地元テレビ局、フリーのジャーナリストが報じる以外、ほとんど東京のメディアで扱われる機会がなかった。自身の取材不足の反省の意味合いからも、どうしてもこの村を訪れてみたかったのだ。

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