韓国で“反日PR”を仕掛ける「スピンドクター」って何者?窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年09月04日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

“犬肉食PR”が仕掛けたスピン

 ご存じのように、韓国には犬を食べる習慣がある。といっても、その辺を散歩しているペットや野良犬を捕まえて鍋にぶちこんだりはせず、「犬牧場」で食用として育てた「雑犬」と呼ばれる国産種を食材としているのだ。

 セリやネギとともに唐辛子や山椒のスープで煮込む「補身湯(ほしんとう)」という鍋料理は有名だが、雑犬を生きたまま瓶に入れ、漢方薬や酒と一緒に3日間茹で、皮膚はもちろん脂肪などがエキスとなった「犬焼酎」もあり、欧米などからは「なんて残酷な」と批判されている。

 その急先鋒は、フランスの元女優ブリジット・バルドー。引退後、動物愛護活動家となり、「犬は人間の昔からの友だち。虐待は許せない」として韓国の犬肉食に反対、政府に何通も抗議の手紙を送っている。

 2008年、『SAPIO』という雑誌の取材で、韓民族犬肉食品研究所」で所長を務める楊順子さんにインタビューをしたことがある。

 犬肉が牛肉に比べてコレステロールが低いこと、美肌効果があることを科学的に調査し、国内外でPRをしてきた“犬肉食PR”の第一人者である。

 「昔の韓国の農村部では、どの家庭でも犬を飼っていて家族が病になった時などにこの補身湯を食べました。それほどこの食事は長い歴史と意味がある。私はうまくアピールすれば、キムチのように世界に誇る韓国の食文化になると信じています。ただ、国の力が弱いので今は難しいだけです」

 そう語る彼女が仕掛けたスピンはなかなかのものだった。

 例えば、FIFAワールドカップ後の2003年7月、フランスの留学生20人やドイツのテコンドーチームに犬肉を試食させ、「おいしい」「ブリジット・バルドーはなにも分かってない!」と感想をもらしたなんて記事を仕掛けた。

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