コラム
» 2012年09月03日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:日本の総選挙より重要、米国大統領選の行方は (1/2)

日本では総選挙の時期が話題となっているが、世界的には目前に迫った米国大統領選の方が注目である。この結果によって、世界経済の方向性も決まってしまうからだ。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 日本の総選挙がいつになるのかも重要だが、米国の大統領選挙で現職のオバマ大統領(民主党)とロムニー共和党大統領候補のどっちが勝つのかの方が、より重大な問題である。世界最高の権力者になる人というだけではない。経済政策がどう変わるかによっては、世界経済が大打撃を受けることもありうるからである。

 ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のポール・クルーグマン教授は「この不況を終わらせためには、財政支出はもちろん、金融も徹底的に緩和すべきだ」と主張している。現在の状況も楽観できる要素は何もないし、政府やFRB(連邦準備理事会)もあまりにも慎重すぎるという。

 もちろんFRBのバーナンキ議長は、1990年にバブルがはじけた当時の日銀に比べれば積極的な手を打ってきた。その当時の政府や日銀の政策は、「少なすぎるし、遅すぎる」と世界から批判されていた。それでもクルーグマン教授は、まったく足りないと言う。

 金融の量的緩和というのは、要するに市中に紙幣をばらまくことである。銀行が保有する国債などの有価証券を中央銀行が買い入れて銀行の保有現金を増やす。それを通常の枠をはるかに超えて実行するのが、量的緩和(QE)で、FRBはすでに2段階のQEを行っていて、第3弾を実施するかどうかというところだ(これについてバーナンキ議長は雇用の状況を見ながら検討するとした)。

 欧州でも債務が過重になっている国(ギリシャやアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリア)の国債をECBが市中銀行から買い入れている。これをさらに積極的にやるという方針が出たものの、ドイツの中央銀行(ブンデスバンク)や財務相などがかなり強硬に反対している。クルーグマン教授に言わせれば、このドイツの姿勢は信じられないぐらい愚かということになるだろう。

 もちろん日本も同じだ。今この時期に財政再建などナンセンス。先行きが見通せない中で、消費者の支出が減っているのに政府まで支出を減らせば、景気が後退するに決まっているというのがクルーグマン教授の見立てだ。

 こうした教授の意見に対しては、反論もある。それもかなり説得力がある。金融の超緩和状態を続ければ、やがては悪性インフレという副作用が経済を蝕むというのだ。この考え方は欧州ではかなり根強い。その議論は、ECBが資金繰りに窮している国の国債を買い入れて、一時的に資金繰りが楽になる(当該国の国債利回りが下がる)としても、その国にとって財政再建をしなければならないという危機感が薄れるだけで、状況はまったく改善しない。そしてじゃぶじゃぶになった資金がやがてユーロ圏を悪性インフレに導くというのだ。

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