Windows 8は何が新しく、何を終わらせるのか遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(2/3 ページ)

» 2012年08月30日 20時02分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

過去5年で起きた7つの変化

 この5年ほどの間のコンピューティングの変化というのは、とても本質的なものを含んでいる。

 上の表は、そうした変化をザッと並べてみたものだが、それぞれの項目も深い意味を持っている。たとえば、スマートフォンなら、単純に操作性のよさだけでなく、位置情報や音声認識もある。いうまでもなく、クラウドコンピューティングは、こうした変化の前提となるコンピューティングそのものだし、HTML5は、1ソースマルチデバイス時代を現実のものにする(前回のコラム「アップルやグーグルも無視できない!? HTML5はなぜ重要なのか? 」を参照)。

 この先にあるのは、「スマートデバイス」とか「クラウドコンピューティング」とか、「ソーシャルメディア」とかいった役者がそろって、それらが再構成されて生まれる何かだろう。

Windows 8の新しさとは何か?

 Windows 8を触っていて感じるのは、そうしたまだ見えない新しい時代の感触のようなものだ。コンピューターにいま押し寄せている大きな波をすべて受け止め、いままでマイクロソフトだけでなく多くの人たちが試みてきたさまざまな課題をさらけ出している。それが、完璧ではないながらも、ある種のめぐり合わせによって使えるレベルに仕上がっているように思う。

 注意深く読んでほしいのは、iOSやMountain Lionよりも、Windows 8のほうが洗練されたOSになっているというのではないということだ。触ってみればすぐにわかるが、Windows 8は、子供でも直感的に使えるほどスマートには仕上がっていないと思う。先日も、米国のユーザビリティの専門家が、「Windows 8はユーザーフレンドリーとは言えない」と発言している記事があった(参照リンク)

 しかしWindows 8には、Windows 7も含めた従来のOSをいかにも古く感じさせるし、iOSを含めたアップルのOSも、窮屈に感じさせてしまうものがある。

 Windows 8の新機能については、すでに詳しい解説記事がいくつも書かれているが、リアルタイムな通知窓でもある「ライブタイル」や、連絡先とソーシャルメディアが融合した「ピープル」、いま使っているアプリから自然にデータを他アプリに引き渡せる「コントラクト」などが、過去5年間の利用スタイルの変化に正直に答えようとした結果であることに注意すべきなのだ。

 興味深いのは、Windows 8にMicrosoftアカウントでログインすると、FacebookやTwitterなどの他サービスに、Windows Liveを仲介してログインできるようになることだ。わたしのアカウントがわたしの分身として、ネットの中に存在しているような錯覚に襲われそうになる。大ヒットソーシャルゲーム「パズル&ドラゴンズ」で、わたしが寝ている間に、育てたモンスターが他人の手伝いでポイントを稼ぐようなことが起きるかもしれない。こんなことを考えたくなることが重要なのだ。

Windows 8にMicrosoft アカウントでログインすると、自動的に同社のクラウドサービスにログインすることになる。これによって複数の端末で設定やお気に入りが同期できるほか、TwitterやFacebookなどの他サービスにログインする

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