コラム
» 2012年08月30日 20時02分 UPDATE

遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論:Windows 8は何が新しく、何を終わらせるのか (1/3)

2週間ほど前からWindows 8を触っている。よみがえるのは、17年前の「Windows 95」の時の感覚だ。Windows 8は洗練されていないOSかもしれない。しかしそこには、ここ5年の変化の結果である“何か”がある。

[遠藤 諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

「遠藤諭の『コンテンツ消費とデジタル』論」とは?

 アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

 本記事は、アスキー総合研究所の所長コラム「0(ゼロ)グラムへようこそ」に2012年8月21日に掲載されたコラムを、加筆修正したものです。遠藤氏の最新コラムはアスキー総合研究所(参照リンク)で読むことができます。


ay_endo01.jpg タブレットからWindows 8に触れた人は、まず滑らかな画面表示やスワイプの気持ちよさに目がいくだろう。Windows 8は、表面に生クリームを塗ったケーキのようなところがある(Modern Style UI)。その下にはスポンジ部分、Windows 7までと同じ舌ざわりのクラシック環境がある。しかしその本質は、コンピューティングの「いま」を形にしたことによって得られる「気分」なのだ

Windows 8は、Windows 95の感覚を思い出させる

 わたしが『月刊アスキー』の編集長をつとめていた1990年から2002年までは、マイクロソフトのWindowsが市場に受け入れられた時期とちょうど重なっている。それは、企業や家庭の中にまでPCが入り込み、動画が再生できるようになり、インターネットとモバイルがやってきた期間でもある。

 2週間ほど前から「Windows 8」に触っていて感じているのは、いまから17年前の「Windows 95」の時に似た感覚である。

 Windows 95が発売された1995年8月(日本版は11月)は、少し気の早いユーザーが「インターネットって使ってみたいかも」と感じ始めた頃だった。Windows 95と同時にリリースされたPlus! for Windows 95には、インターネット接続とブラウザのIEが含まれていた。とりあえず電話回線があれば、誰でもネットを使えるようになったことの意味は大きい。

 iPhoneが発売されてから5年が経過して、ソーシャルメディアの利用者数がネット人口の半数を占めるいま、コンピューターの使い方やネットの意味は、すでに次のステージに移ろうとしている。

 iPhoneは、スティーブ・ジョブズがそう言ったように「電話機」である。受話器を取って喋り、通話終了で元の状態に戻るのと同じく、アプリを起動して使い、利用終了で完全に元の状態に戻れる。iPhoneのホームボタンは、電話のフックボタンなのだ。だからこそ、iOSはシンプルで誰にでも使えるものになっている。しかし、コミュニケーションのスタイルは、タイムラインの文脈や人との関係を感じながら呼応する形になってきている。

 マイクロソフトが企業向けに「Office 365」を売っているのは、ワープロや表計算の機能より、人と人のコミュニケーションギャップのほうが取り組むべき課題だと気づいたからだ。オフィスシーンでも、セールスフォースの「Chatter」や、マイクロソフトが買収したばかりの「Yammer」のような、ソーシャルメディアが注目されている。そのほうが、誤解もなく効率的で、モチベーションも上がるコミュニケーションがとれるからだ。

 一方、iPhoneが登場してから起きているのは、個人の手のひらの中でやることのほうが、仕事の生産性向上や売り上げ増の決め手になることがある、というようなことだ。「シャドーIT」(Shadow IT)と呼ばれる、企業のIT部門の関知していないIT活用が広がってきている。これの一時的妥協案として、「BYOD」(ワイン持参のパーティを意味するBYOWにひっかけて、個人所有の端末を会社に持ち込む=Bring Your Own Device)なんて話も出てきている。

 TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアのIDがあれば、他のサービスに登録できるというのも、ごく普通のことになっている。昨年9月に、Facebookはオープングラフを進化させた。外部サービスでの操作を、Facebookのフィードに動詞として表示するようにしたのだ。そうして成功したサービスの代表例が「Pinterest」で、「Pined」(ピン留め)というアクティビティとして表示される。

 iTunesストアやGoogle Playストアによって、コンテンツやアプリを世界中で自由にダウンロードして楽しめるようにもなっている。OSは、もはやこうした配信や課金、広告システムなどのしくみ、さらにはクラウドサービスを併せ持つプラットフォームを持って、はじめて一人前といえる時代に向かっている。

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