日本とはまったく違う!? 米国映画のマンガ原作はわずか1%(後編)アニメビジネスの今(1/3 ページ)

» 2012年08月29日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

アニメビジネスの今

今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。


 前回は日本アニメの原作がマンガに集中している状況を紹介した。それでは日本と並ぶアニメ大国、米国のアニメの原作はどのようになっているのだろうか。

 →「映像作品の原作はどこから? 日本アニメの半数以上はマンガ(前編)

 次表は2011年に公開された米国の劇場アニメ13本の原作形態を調べたものだが、日本と大きく異なっていることが分かる。

米国劇場アニメの原作形態(2011年公開作品、BOX OFFICE MOJOより筆者作成)

  タイトル 原作形態
1 Cars 2/カーズ2 オリジナル脚本
2 Kung Fu Panda 2/カンフーパンダ2 オリジナル脚本
3 Puss in Boots/長ぐつをはいたネコ 民話(シャルル・ペロー)
4 Rio/リオ オリジナル脚本
5 Rango オリジナル脚本
6 Gnomeo and Juliet オリジナル脚本
7 The Lion King/ライオンキング オリジナル脚本
8 The Adventures of Tintin/タンタンの冒険 マンガ(エルジェ)
9 HAPPY FEET 2/ハッピーフィート2 オリジナル脚本
10 Arthur Christmas/アーサーのクリスマス オリジナル脚本
11 WINNIE THE POOH/クマのプーさん 児童文学(A.A.ミルン)
12 Mars Needs Moms/マーズ・ニーズ・マムズ 児童文学(バークリ・ブレスエット)
13 HOODWINKED TOO! HOOD VS. EVIL(赤ずきん) 童話

 13作品中、最も多いのはオリジナル脚本で8作品。次が児童文学原作の2作品、以下、パブリックドメインとなったシャルル・ペローがまとめた昔話『長ぐつをはいたネコ』、エルジェ原作のマンガ『タンタンの冒険』、『HOODWINKED TOO! HOOD VS. EVIL(赤ずきん)』などが並び、マンガ原作は『タンタンの冒険』だけであった。

 米国劇場アニメの原作形態は、オリジナル脚本が圧倒的に多いことがお分かりになっただろう。しかし、これはアニメだけでなく、ハリウッド映画全体の特色でもある。

ハリウッド映画に見る原作形態のあり方

 次表は「The Numbers」というWebサイトで見られる1995〜2012年のハリウッド映画の原作形態である。

 ここでも目に付くのがオリジナル脚本のシェアの高さ。半分強というシェアは日本アニメにおけるマンガ原作の割合とほぼ同じ。一方、マンガのシェアは1.3%という低さ。日本では年間150作品ほどのマンガが映像化されるのに対し、米国ではこの18年間でたった109作品である。米国では小説やマンガといった原作に頼る部分が少なく、オリジナル脚本が主流であるということが分かるだろう。

1995〜2012年のハリウッド作品の原作形態(The Numbersより、8月20日時点)

順位 原作のソース 作品数 シェア
1 Original Screenplay(オリジナル脚本) 4372 53.7%
2 Based on Real Life Events(実在の出来事) 1482 18.2%
3 Based on Book/Short Story(小説/短編) 1351 16.6%
4 Remake(リメイク) 243 3.0%
5 Based on Play(演劇) 179 2.2%
6 Based on TV(テレビ) 172 2.1%
7 Based on Comic/Graphic Novel(マンガ) 109 1.3%
8 Based on Magazine Article(雑誌記事) 62 0.8%
9 Traditional/Legend/Fairytale(伝説、おとぎばなし) 35 0.4%
10 Based on Musical/Opera(ミュージカル/オペラ) 30 0.4%
11 Based on Game(ゲーム) 29 0.4%
12 Compilation(オムニバス) 20 0.2%
13 Based on Short Film(短編映画) 17 0.2%
14 Based on Factual Book/Article(ノンフィクション) 13 0.2%
15 Spin-Off(スピンオフ) 14 0.2%
16 Disney Ride(ディズニーアトラクション) 7 0.1%
17 Based on Ballet(バレエ) 3 0.0%
17 Musical Group Movie(音楽グループ) 3 0.0%
19 Based on Religious Text(聖書) 2 0.0%
19 Based on Toy(玩具) 2 0.0%
21 Based on Web Series(Webのシリーズ) 1 0.0%

 それに加えて、著作人格権がない米国では、たとえ原作があってもオリジナルな脚色を施すことが多く、日本のように「そのまま」というパターンはまれである。作り手が自分たちのオリジナルな発想にこだわりを見せる傾向が強く、原作ものであってもさまざまな解釈や脚色がなされるケースが多い。

 従って、原作ものが映画化された場合、原作以上の傑作が生まれる可能性もあるが、逆の場合もあることはハリウッド版『ドラゴンボール(DRAGONBALL EVOLUTION)』を見れば理解できるだろう。

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