映像作品の原作はどこから? 日本アニメの半数以上はマンガ(前編)アニメビジネスの今(3/3 ページ)

» 2012年08月28日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]
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マンガ原作の奪い合いが発生

 かつてはアニメが独占していた感のあったマンガ原作だが、最近はテレビドラマや実写映画といった分野でも多く見られるようになった。2011年には150ほどのマンガ原作が映像化されたが、そのうち約3分の2がアニメで、約3分の1がテレビドラマや実写映画だった。

 次表は2011年にマンガを原作として作られたテレビドラマや実写映画の一覧だが、アニメ以外にもマンガ原作が多くあることが分かる。この現象は映像作品全体でマンガの“マザーコンテンツ”化が進んでいる証拠だろう。

マンガを原作とした主要テレビドラマ(2011年)

『ゴタ消し 示談公証人 白井虎次郎』『バーテンダー』『デカワンコ』『美咲ナンバーワン!!』『最上の命医』『シマシマ』『JIN−仁−』『アスコーマーチ』『ハガネの女』『鈴木先生』『IS〜男でも女でもない性〜』『華和家の四姉妹』『バラ色の聖戦』『ろくでなしBLUES』『名探偵コナン』『荒川アンダー ザ ブリッジ』『桜蘭高校ホスト部』『花ざかりの君たちへ』『この世界の片隅に』『アイシテル〜絆〜』『俺の空 刑事編』『専業主婦探偵〜私はシャドウ』『深夜食堂』『怪物くん』『らんま1/2』


マンガを原作とした主要実写映画(2011年)

『あしたのジョー』『GANTZ』『BADBOYS』『まほろ駅前多田便利軒』『市民ポリス69』『高校デビュー』『岳ーガクー』『ほしのふるまち』『パラダイス・キス』『星守る犬』『モテキ』『忍たま乱太郎』『うさぎドロップ』『極道めし』『カイジ2〜人生奪回ゲーム〜』『スマグラー おまえの未来を運べ』『怪物くん』『寄性獣医・鈴音』『王様ゲーム』『ワイルド7』


 かつてテレビドラマや実写映画といった業界では、「マンガなんか子どもだまし」といった気風が見受けられたものである。しかし、今ではマンガが持つエンタテインメント性がヒット作品を生み出す重要な要素として、実写サイドからも真剣に受け止められるようになったということなのだろう。また、CG技術の発展で、アニメでしかできなかった表現がテレビドラマや実写映画でも可能になったことも追い風になっている。

 2011年に公開され、興行収入10億円以上を記録した日本の実写映画は25本。その中でマンガを原作とした作品は『GANTZ』(興収34億5000万円)、『GANTZ PERFECT ANSER』(同28億2000万円)、『モテキ』(同22億2000万円)、『岳 −ガク−』(同16億3000万円)、『カイジ2 人生奪回ゲーム』(同16億1000万円)、『パラダイス・キス』(同13億9000万円)、『あしたのジョー』(同11億円)の7作品となっている。

 だが、こうした傾向はアニメサイドにとってはプレッシャーとなっている。ひと昔前なら、「ヒットマンガの映像化はアニメから」というのが定番だったが、今やテレビドラマや実写映画と競合する時代になってしまったからだ。

 先ほども述べたようにCG技術の発達によって「アニメでしか表現できない」といったアドバンテージが徐々に失われつつある今、ハリウッド並みとは言わないが、それなりの予算を持ったテレビドラマや実写映画が出てくれば、今後ますますマンガ原作はそちらに引き寄せられるだろう。アニメサイドとしては、今一度アニメ表現というものを考えるべき時代が訪れているのではないだろうか。

 今回は日本アニメの原作事情について解説したが、後編では日本とは大きく異なる米国アニメの原作事情について紹介していく。

 →「日本とはまったく違う!? 米国映画のマンガ原作はわずか1%(後編)

増田弘道(ますだ・ひろみち)

1954年生まれ。法政大学卒業後、音楽を始めとして、出版、アニメなど多岐に渡るコンテンツビジネスを経験。ビデオマーケット取締役、映画専門大学院大学専任教授、日本動画協会データベースワーキング座長。著書に『アニメビジネスがわかる』(NTT出版)、『もっとわかるアニメビジネス』(NTT出版)、『アニメ産業レポート』(編集・共同執筆、2009〜2011年、日本動画協会データーベースワーキング)などがある。

ブログ:「アニメビジネスがわかる


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