コラム
» 2012年08月28日 08時00分 UPDATE

職選びを“乗り物”に例える (1/2)

乗り物の好みは人さまざまだ。安定した運航で遠くまで連れていってくれる大型船がいいという人もいれば、目の前の岩山を、オフロードバイクでケガを承知で駆け上がりたいと衝動が走る人もいる。職選びもまた同じである。

[村山昇,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行う。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 私は仕事柄、さまざまな人のキャリアを観察しています。

 Sさんは31歳。世間でも超一流と言われる大企業に7年間勤め、2年前、ベンチャー企業に転職した。大企業勤めが特に嫌だったわけではない。勤めようと思えば、定年まで勤められた会社だったという。

 ただ、大組織の中にいて、忙しいだけで退屈な内容の仕事に自分が生き生きしていないなと感じる日々にモヤモヤ感があった。そんな折、みずからの事業を熱く語るベンチャー経営者に出会った。その人の情熱と夢に共感し、いとも簡単にそこに転職を決意した。年収は2割減。会社の知名度も安定度も比較にならないくらい低くなった。任された職種もこれまでとまったく違う。けれど、社員数十名の組織での自分の役割や影響力は格段に増した。

 「小さい会社は問題も多いが、自分のやりがいも大きい」とSさん。自分の意見や行動が組織に響く手ごたえ、自分の成長と組織の成長が月々年々よく見えるという面白さ。そして、事業の方向性について、社長と“差し”で話せる経営参加意識。Sさんはこの転職がよいものだったと確信している。

「職選び」を乗り物に例える

 さて、Sさんの転職話を前置きとして、今回は自分にとっての「職選び」を乗り物に例えてみたい。

 まず、大企業勤めは、言ってみれば「大型船」である。パワフルなエンジンを装備し、多くの人数を安定した速度で、しかも遠くまで運んでいくことができる。船体は頑丈で多少の波にはびくともしない。屋根や窓がしっかり付いているので、雨が降っても、風が吹いても中の人間は平気である(空調がきいている部屋もあって快適ですらある)。その上、自分1人が多少居眠りをしても、その船は運行を止めずに進んでいってくれる。

 ただ、難点もある。自分に与えられたスペースが限られているのでとても窮屈だ。また、作業はこと細かに分けられ、はたして自分のやっている作業がどれだけ全体に影響しているのかが分かりづらい。そんな中で、個々人はともかく自分の居場所を確保するのに忙しい。が、その乗り物がどこに向かうかは、多くの場合、個人では決めることができない。

 一方、ベンチャー会社や起業は「オートバイ(自動二輪車)」である。細い道や多少の悪路も何のその。エンジン音を高鳴らせながらグイグイと突き進んでいく。ハンドルさばきは自分次第。風を切りながら走り、自分の一挙手一投足がマシンに直下に伝わる快感は応えられないものがある。

 しかし、雨が降ればズブ濡れ覚悟。ちょっとのハンドルミスが大きな事故につながるという危険性は常に隣り合わせ。オートバイはハイリスク・ハイリターンな乗り物なのだ。

 また、町の中小企業はさしずめ、「小さな帆船」といった感じだろうか。その日その日の風向きを常に気にしながら、帆の位置を変えてゆっくり進む。出せるスピードは限られているし、遠くへも行くにも難がある。景気といった波の影響をもろに受けるからだ。

 しかし、自分たちしか知らない穴場の漁場があって、そこで高級魚の一本釣りの醍醐味を味わうこともできる。帆船はエンジンで走る高速の乗り物では味わえない独特の世界を持っている。

 そして、最後に自営業・フリーランス。これは「自転車」か「徒歩」だ。漕ぐこと、歩くことをやめたらそこでストップする。動く早さ、動く距離はすべて自分の意志と体力次第だ。

 もちろん行き先はすべて自分で決める。道草は自由。途中で道を変えるのも自由。ただし、雨が降り、風が吹けば自分でよける道具や工夫が必要になる。しかし、移りゆく景色、風の匂い、季節の音を楽しみながら進むことができる。

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