ビジネス書+ライトノベル=“ビジネスライトノベル”の誕生ビジネスノベル新世紀(1/4 ページ)

» 2012年08月24日 08時00分 公開
[渡辺聡,Business Media 誠]

渡辺聡(わたなべ・さとし)

神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所設立を経て、2008年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。現同社代表取締役。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなどのコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2.0』『アルファブロガー』(ともに翔泳社)など。


 前回の記事「もしドラだけじゃない! “ビジネスノベル”が増えているわけ」では、ビジネス書の販売手法、読み手への伝え方の手法としてビジネスノベルというジャンルが出てきた流れを紹介しました。第2回は、ビジネスノベルの中からさらに“ビジネスライトノベル”とでも言えるようなジャンルが生まれつつある現状を解説していきます。

 ビジネスライトノベルについて触れる前に、“ライトノベル”というジャンルについて簡単におさらいしましょう。ライトノベルというジャンルが何を指すのかは、実ははっきりしていません。大まかな傾向としては、次のような特性を踏まえた作品群を指します。

  • 想定読者は主に中高生
  • イラストを重視しており、キャラクターやストーリーもマンガ的
  • 高尚な文学的表現を求めるというよりは、とっつきやすさや入りやすさを大事にする

 マンガと一般小説の間くらいの作りと難解さ加減になることからか、販売傾向や部数動向もちょうど両者の間くらいになっています。

『十二国記』(講談社X文庫ホワイトハート文庫)

 しかし、小野不由美氏の『十二国記』のような歴史ファンタジーの一大傑作が、当初は講談社X文庫ホワイトハート文庫からライトノベルとして出されていたり(現在は新潮文庫や講談社文庫から大人向けの文庫版も出されている)、純文学とほぼ同一にみられるような作品もあったりするなど、ごった煮になっているのが実状。そのため、定義論やジャンル論はあまり意味をなさない側面もあります。

 一般小説の書き手でも、ライトノベルを経由した人は一線級の方でも少なくありません。2008年に直木賞を受賞した桜庭一樹さんはライトノベルレーベルのファミ通文庫で『赤×ピンク』『推定少女』を書いていましたし、同じく2003年に直木賞を受賞した村山由佳さんの「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズも、直接ライトノベルと分類されることはあまりありませんが、同ジャンルの成長とともに歩んできたシリーズです。また、2010年の直木賞にノミネートされた冲方丁さんもライトノベルを書いています。

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