大人たちよ「子どもに旅をさせよう」――何かを手にするはずだ杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)

» 2012年08月24日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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ゲームよりも旅、ゲームのための旅

 今の子どもたちは旅をしているのだろうか。リアルな社会で冒険をしているのだろうか。私はいっときゲーム業界の片隅にいたので「ゲームばかりやらないで旅に出なさい」とは言いづらい。しかし、これは言える。

 「旅を経験するとゲームが面白くなる」

 疲れ果て、腹を減らして歩き続けて、人気のない商店街の奥に、ぽつんと開いている定食屋を見つけたときの喜び。歩きまわって痛い足を引きずりながらホテルに着いたときの安堵感。そんな経験があれば、ヒットポイント(キャラクターのダメージなどを数値化したもの)がヒトケタの状態で、宿屋に着いたときの嬉しさもひとしおだ。さまざまな人と出会い、交流する術を身につければ、対戦ゲームの相手と仲良くなりやすい。旅もゲームも、人生というリアルなロールプレイングゲームのイベントにすぎない。

 電車の中で、景色を見ないでケータイゲームで遊んでいる子を見ると、もったいないなあと思う。昨今のいじめや少年の自殺の報道なども心が痛む。旅に出て、世の中の広さを知っていれば、もっと違う考え方もあっただろうに。

 私には子どもがいないが、もしいたら「SLみなかみ」で出会ったお父さんのように、子どもにリアルな旅を経験させたい。遠くに行かなくてもいい。家の最寄り駅からその路線の終点まで、独りで行って来いと送り出したい。

 本物の冒険は、小さな画面の中にはない。世の中は、教室よりも、ずっと広く、楽しい。言葉ではなく、経験から学ばせたい。

東海道本線の車窓から見かけた岳南鉄道。地元の東急の電車が色を変えて使われていた。小さな発見だった(左)、東京ミニ周遊券で訪れた国鉄相模線の西寒川駅。通称「寒川支線」の終点で、1984年に廃止された(右)
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