さて、当然ながら、良い製品を作っただけではモノは売れない。製品の価値を消費者まで確実に伝達して売る「仕組み」を構築しなければならない。マーケティングの流れをモレ抜けなく設計することが重要だ。
「アクエリアス ゼロ」のプロモーションにおいては、コミュニケーションターゲットとして周辺層への波及効果を狙い、「35歳」という年齢が設定された。セレブリティにはオダギリジョーを選び、CMでは「軽い運動をサポートする」という意味合いから「チアリーダーが日常の運動を応援する」というシーンを演出した。
実は現代日本人のカロリー摂取量は戦後一貫して減少している。しかし、肥満を示す「BMI値」は上昇を続けている。要するに身体を動かさなくなっているのである。そこで、京都大学大学院人間・環境学研究科応用生理学研究室の森谷敏夫教授の監修を受け、「ちょこまか運動」、つまり毎日こまめにカラダを動かすことをあわせて訴えることにした。ターゲットが実践している軽い運動を無駄にしない、そのための燃焼系サポート成分「カルニチン」配合をさりげなく訴求する施策なのだ。
ホワイトスペースを埋める目論見は見事に当たり、「アクエリアス ゼロ」は発売後わずか10週間で累計5000万本を売り上げる成功を収めた。暑い夏が追い風になり、売り上げはさらに伸長を続けているという。
仕事は「段取り八分」ともいう。市場の潮目を読みながら、準備に2年もの歳月をかけたアクエリアス ゼロは、まさにそれを体現した成功例でもある。環境の変化をつかんで市場のニーズ、未充足ニーズ・市場機会を明確にし、ターゲットをはっきりさせる。ターゲットのKBF(Key Buying Factor=購買決定要因)を洗い出し、競合の動きを察知し、勝てる要素(KSF=Key Success Factor)を設定する。マーケティングの王道を丁寧に貫いた本製品から得られる示唆は多い。
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。Facebookでもいろいろ発言しています。
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