なぜ日本政府は外交下手になったのか藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年08月20日 07時59分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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民主党政権下で4人目の外相

 しかし不幸なことに2009年夏に登場した民主党政権は、こうした外交の軸をまったく無視したかのようだ。岡田克也氏(現副総理)から始まって、前原誠司氏(現政調会長)、松本剛明氏そして玄葉光一郎現外相とわずか3年の間に4人もの外相が登場している。これで「政治主導」を主張されたのでは、現場はたまったものではあるまい。

 そればかりではない。2009年に有権者の期待を一身に担って登場した鳩山首相は、外交的にはまったくオンチであることを露呈してしまった。「東アジア共同体構想」「対等な日米関係」「(普天間基地移転は)最低でも県外」と言って、日米関係をギクシャクさせてしまったのである(本人がいまだにこれらの一連の発言がどのような影響を及ぼしたのかについて、ほとんど「無自覚」であるように見えるのは理解しがたい)。

 米国側から見れば、上の3つのキーワードからなる方程式の意味するところは「米国から離れ、中国に接近する」ということだ。それは中国の台頭を警戒する米国にとっては西太平洋における戦略の大幅見直しに通じる。いくら外交戦略を理解していない首相だとしても、日本の最高権力者の発言だから無視できるはずもない。結局、鳩山首相は「勉強したら米海兵隊は沖縄に必要だということが分かった」と言って、辺野古への移転を認めようとしたが、沖縄の理解を得られるはずもなく、対米関係の修復もできないまま政権を放り出してしまった。

 ロシアのメドベージェフ大統領(現首相)が北方領土を訪問したときにも、時の政権は激しい言葉で非難しても具体的に打つ手がないから、ロシアからはほとんど無視された。これを見れば、韓国の李明博大統領が竹島を訪問する誘惑に駆られても不思議ではない。軸の定まらない民主党政権のうちに、何とか既成事実を積み上げようというのである。

 不幸なことは、民主党政権が当初から「官僚を信用しない」というスタンスで入ってしまったことだ。もちろん官僚の中には、長年の付き合いがある自民党にすり寄る人もいただろうが、官僚機構という大行政組織、それも過去の経緯を知っている組織を無視してガバナンスは成り立たない。

 政治の混乱を狙って仕掛けてきたロシア、韓国。そして指導部が交代する中国。これらの隣国にどう向き合うのか。日本に与えられている猶予はそれほどない。

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