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» 2012年08月13日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:Fair valueとMarket value、どちらの価値を意識するべき? (2/2)

[ちきりん,Chikirinの日記]
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仕事にもFair valueとMarket valueはある

 市場価格はどんな分野でもすぐに変わります。コレクターグッズのオークションでも、そのアイテムが流行っている間はやたら高値が付きますが、人気がなくなると一気に暴落します。一方で正当な価格は(ある程度変動はしますが)そんな急激には変わりません。テレホンカードや切手であれば、公正な価格は明記されています。

 また資本主義国では大半の仕事の給与は、その仕事の本質的な価値とは関係がありません。それらは需給で決まってます。需要が高いのにスキルや経験がある人が少ない分野では報酬は高くなりますが、それらが「ほかの仕事より価値が高いかどうか」は分かりません。

 したがって、市場価格に基づく給与が公正な価値に基づく給与より何倍も高いという業界で働いていると、何かの拍子に市場価格が暴落し、公正な価値に収束してしまうこともありえます。

 Fair valueとMarket valueは、「市場が効率的であれば」理論的には同一になるはずなのですが、、実際には市場が完全に効率化するなどということはありえません。

つまり現実の世の中では、「モノの価格は常に2つある」のです。そして私たち一人一人は、「市場価格と正当な価格の2つのどちらの価格で売るのか? 買うのか?」という選択肢を常に突きつけられ、判断しながら生活しているのです。

それはどちらの価格?

 ところで多くの人は、教育は非常に投資効率がよいと考えています。しかし本当にそうでしょうか? 例えば米国のビジネススクールの授業料は、過去10年から20年の間に高騰しました。

 ビジネススクール側にしてみれば、それでもまったく問題がありません。なぜなら、今の値段(1年間の学費が400万円程度、2年のプログラムなら授業料だけで800万円)でも世界中に「その学位をその値段で買いたい」人があふれているからです。この価格は明らかに「市場価格」です。

 では、今、米国のビジネススクールに行くことの「公正な価値」はいったいいくらなのでしょう?

 それは、そこで学位を取ったことで上昇する将来の給与の合計ということになります。その合計が、かかる費用(授業料や報酬に加え、働いている人が留学した場合は、その期間中に稼げたはずの給与も合わせた合計)を超えなければ、留学することの価値はマイナスになってしまいます。今のレベルの授業料を払っても、本当にみんな経済的利益が得られるのでしょうか?

 誤解のないように書いておきますが、私は「市場価格」が悪い価格だと言っているわけでも、正しくないと言っているわけでもありません。市場が付ける価格とは、すべての取引参加者の総意として尊重されるべき価格です。

 しかし、何かを買ったり売ったりする時、特に教育や住宅などの大きな買い物に関しては、自分が今、払おうとしているのはどちらの価格なのかということ、そして、その2つの価格はどの程度、乖離しているのか、という観点を常に持っておく必要があると言えるでしょう。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

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兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。

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