ルールの厳格化と業務の定型化が、組織の閉塞感を生み出す(1/2 ページ)

» 2012年08月08日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 何かを行う際には、副作用や反作用があることを想定しておかねばならない。薬を飲んだら、主要な症状は緩和されるが、そのほかの部分に副作用が出ることがあるし、ボールを押せば押し返されるように、常に反作用がある。

 医療や物理に限った話ではなく、組織運営や人材マネジメントについても同じで、何かの策を講じる際には良いことばかりではなく、何らかの副作用や反作用を想定する必要がある。また想定できないことも多いから、どのような副作用や反作用があったのかを総括しなければならない。

 「組織の活性度が低下した」「人が育ってこない」という結果は、ここ十数年、多くの企業で進められた規制・管理強化に関する諸施策の副作用・反作用である。コンプライアンスの実践を目的に行われたルールとその運用の厳格化、効率化を目的に行われた業務の定型化は、確かにリスクのコントロールとコスト削減には貢献したが、組織には息苦しさや閉塞感を漂わせ、仕事では創意工夫や挑戦といった積極的な取り組みへの意欲を奪っていった。「組織の活性度が低下した」「人が育ってこない」という現象は、新しい問題が浮上したととらえるべきではなく、過去に実行した策の副作用・反作用と考えるべきである。

 もちろん、思いもしなかった悪影響が出るのは仕方がない面もある。しかし、それらを無視して放置したり、正当化して継続したりするのは、過ちをそうと認めない官僚と同じで罪深い。また、やってきたことを総括せずに、次々に起こってくる問題にいちいち新たな取り組みを行うのは、子どもと同じで幼稚だ。

 今、経営や人事がすべきことは、これまで進めてきた諸施策を振り返り、その副作用・反作用を冷静に総括することである。過ちもあっただろうし、行きすぎもあっただろうが、それを率直に認めることなしに、表れた副作用・反作用を取り去ることはできないだろう。

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