Web、メール、SNS――ANAのネット戦略に学ぶ(1/4 ページ)

» 2012年08月03日 18時35分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
全日本空輸 プロモーション室 マーケットコミュニケーション部 企画・宣伝チーム主席部員 前田欣伸氏

 1日の訪問者数40万人、年間販売額4300億円……大手ポータルでもEC専門サイトでもないのに、これだけの集客力・販売力を誇るWebサイトを運営しているのが全日本空輸(ANA)だ。

 1990年代後半、iモードのスタートとともに始まったANAのチケットネット販売。現在では自社サイトで取り扱いチケットの7割を販売するようになった。Webサイトを運営するだけでなく、より効果的なメールの配信、データ分析、TwitterやFacebookといったSNSの活用……と、同社のネット戦略は時代とともに変化している。

 ANAのネット戦略のポイントとは? 全日本空輸 プロモーション室 マーケットコミュニケーション部 企画・宣伝チーム主席部員、前田欣伸氏に聞いた。

※本記事は、6月7日、Adobe Innovation Forum 2012(参照リンク)で行われたセミナーの内容を元にしています。
ANAのWebサイト。2012年3月にリニューアルした

ネット・携帯電話とともに進化してきた

 「2011年は航空会社にとって非常に厳しい年でした。そして2012年は、航空業界が大きく変わる年だと思います」

 2012年3月にWebサイトをリニューアルしたANA。前田氏はこう話す。「日本にも、LCCが3社参入します。新しいビジネスの相手が登場する中で、どうLCCと差別化するか? 今年3月に行ったWebサイトのリニューアル、最大の変化はトップページの一等地にブランドバナーを配置したことです。ANAのブランドを積極的にサイト訪問者にアピールすることを目的としています」

 確かにトップページの目立つ部分に、787の機体を描いた大きなブランドバナーが設置されている。「こういったサイトデザインの変更時には、SiteCatalystのクリックマップを使います。ユーザーはどこを見てどこを押すのかが一目で分かりますから、担当者の好みに引きずられることなく画面の最適化を進めることができます」

 Adobe SiteCatalyst(アドビサイトカタリスト、以下SiteCatalyst)は、アドビシステムズが提供するアクセス解析ツールだ。クリックマップはSiteCatalystの機能の1つで、サイト訪問者がどのような行動をとっているかをWebページ上で視覚的に確認できる機能である。ANAではSiteCatalystを、2007年から導入している。現在はこのようなツールを使って積極的なデータ分析・プロモーションへの展開を図る同社だが、当初は「ネットへの取り組みは非常に実験的なものだった」(前田氏)

 ANAのWebサイトが作られたのは1990年代後半。iモード黎明期に「携帯電話から飛行機のチケットを予約できる」をウリにスタートした。同時にマイレージサービスも開始、現在提供しているサービスの原型がこのころできることになる。当初は実験的なチャネルとして取り組みが始まったため、チケットをいくら売り上げたかは把握していたものの、サイト分析という意識はなかったそうだ。2001年頃、インターネットでのチケット取り扱いシェアが30%を超えたころからWebサイト分析を開始。ただ当時の指標はPVやUUなどシンプルなものだったし、リアルタイムにデータ分析しようという考えはなかったという。

 「当時はPCでできることと携帯電話でできることがまったく違いました。でも、だんだんとそれが近づいてきた」(前田氏)

 2007年には、おサイフケータイ機能やQRコードを従来の航空券・搭乗券の代わりに使う「スキップサービス」をスタート(参照記事)。これによりチケットレス、チェックインレスを実現した。予約からチケット購入、座席指定、チェックイン、マイレージ確認……ここまでのすべてを、ANAはWebやケータイのサービスを組み合わせて提供している。

スキップサービス。ANAマイレージクラブ会員であれば会員カードやおサイフケータイで、そうでない場合はQRコードを使うことで保安検査場や搭乗口を通過、搭乗できる
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.