この連載は書籍『ソーシャルインフルエンス 戦略PR×ソーシャルメディアの設計図』(アスキー・メディアワークス)から抜粋、再編集したものです。
企業のマーケティングや広告、PR、ソーシャルメディアの担当者たちが日々頭を悩ませていることは、CMのクリエイティブやメディア露出量、集客数、フェイスブックの「いいね!」の数などです。ところが、それらは手段であって目的ではありません。本当の目的は「世の中を動かし、ブームを起こす」ことです。
消費者の価値観やメディア環境の変化、特にソーシャルメディアの登場によって、かつてのコミュニケションプランニングでは世の中を動かすことが難しくなってきました。そこで、新しい時代のコミュニケーションコンセプトが必要です。
本書では、ソーシャルメディアや戦略PRの限界を超えて、「人を動かし、話題を起こし、世の中を動かす」新しいチカラ、「ソーシャルインフルエンス」の全貌とその方法論について解説します。
→「影響の与え方が変わった」というが、何がどう変わったのか(1)
→企業の公式アカウントは、どのくらい拡散されているのか(3)
→会話にされやすいニュース、会話にされにくいニュース――その違いは?(4)
→自閉症をもっと世の中に知らせたい! で、どうしたのか?(5)
→本記事
「コミュニケーション・シャットダウン」の基本設計はこうだ。2010年11月1日にFacebookとTwitterをシャットダウンすることを広く呼びかける。「世界で初めて、ソーシャルメディアを使ってソーシャルメディアを閉鎖する」というのがその謳(うた)い文句だ。
実際にシャットダウンするために「The Chapp」と名付けられたアプリが開発された。このアプリをダウンロードすると、ユーザーはこれを通じて基金にドネーションができ、またその1日だけシャットダウンを実践していることがアカウントページに表示されるしくみだ。
2社は同時に、世界中に散らばるNPOなどの自閉症支援基金にコンタクトし、「コミュニケーション・シャットダウン」への参画を呼びかけた。もとはオーストラリアのNPOから始まったとはいえ、自閉症患者は世界で急増しており、またソーシャルメディアにも国境はない。このネットワークの創出によって、世界中から基金を募ることが可能になった。
こうして基本的なプログラムの設計が決まると、次はコミュニケーション戦略だ。短期間で影響力を最大化するために、関与させ発信させるターゲットごとに大きく3つのステージが策定、実行された。
ステージ1:エバンジェリスト(自閉症に関心が深く、ソーシャルメディアで影響力を持つ)
ステージ2:インフルエンサー(社会活動をするセレブや著名人など、大きな影響力を持つ)
ステージ3:マスメディア(テレビや新聞、ネットメディアなど広範な報道のパワーを持つ)
深い関与(エンゲージメント)が期待できる層からアプローチを始め、より広範なメディアに広げていく。さらには、ステージ1の成果がステージ2、ステージ2の成果がステージ3にインフルエンス(影響を及ぼす)ように設計されているわけだ。
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