「長距離鉄道旅行」の終焉が、近づいてきた杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

» 2012年07月27日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 ほとんど言いはやされていないが、今年はJRグループ発足から25周年である。25という数字は50や100には及ばない。しかし4分の1世紀であるし、営業プロモーションに使える数字だ。20周年の時は盛大だったような記憶があるが、今年は密かにJR九州が2万5000円の記念旅行商品を設定し、JR四国が小さなイベントを実施するくらいだ。

 記念と言えば、今年は青春18きっぷの発売から30周年である。こちらも記念行事がまったくない。30はキリがいい。こちらもプロモーションしていいはずだが、特にキャンペーンの動きはない。東日本大震災からの復興がほど遠い状況を考えれば、まだ自粛ムードが漂っているのかもしれない。もっとも、計画停電で列車の運休や減便が検討されている状況では、おめでたいムードになりにくいだろう。

 ともかく、全国一体の「日本国有鉄道」の路線網が6つの地域に分割されてJR旅客各社が発足して25年経った。いわゆる分割民営化について、当時は「日本一体の鉄道ネットワークが機能しなくなる」という声も多かったと記憶している。そして懸念通りになった。JR旅客会社は互いの連携意識が希薄になっている。長距離きっぷより自社内のきっぷに注力し、長距離列車は衰退した。前回紹介した周遊きっぷの衰退が、まさにそれを象徴している(関連記事)

 JR発足25年を振り返って、これで良かったと思いますか? と聞かれれば「悪くなかった」と答える。なぜならJR発足以前に、長距離旅行で鉄道が選ばれなくなっていたからだ。

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