原発事故の“愚かさ”を、どのように表現すればいいのかさっぱり分からなかった、3.11報道(3)(1/4 ページ)

» 2012年07月25日 08時02分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

さっぱり分からなかった、3.11報道:

 2011年3月11日に起きたマグニチュード9.0の東日本大震災。それが引き起こした巨大津波、そして福島第一原発の事故……。首都圏にまで広がった放射性物質に対し、新聞、テレビ、雑誌、Webサイトなどが報道合戦を繰り広げ、分かったことがひとつだけある。それは「よく分からなかった」ことだ。

 原発事故は「戦後最大のクライシス」といってもいい状況だったのに、新聞を読んでも、テレビを見ても、「避難したほうがいいのかどうか、分からなかった」という人も多かったはずだ。3.11報道のどこに問題があったのか。その原因は報道機関という組織なのか、それとも記者の能力なのか。

 大震災と原発報道の問題点を探るために、ジャーナリストとして活躍する烏賀陽弘道氏と、作家でありながら被災地に何度も足を運ぶ相場英雄氏に語り合ってもらった。この対談は、全6回でお送りする。


現実がエンタテインメントを越えた

相場英雄氏

相場:私はフリーになる前に、時事通信社で金融関係の記事を書いていました。他社が3日前に早く情報を手に入れるのであれば、こちらは4日前に……と思うわけですよ。でも、ある日、ふとこのように感じてしまった。「何でこんなバカなことやってるんだろ」と。

 何日かしたらニュースではなくなってしまう。それを「スクープ」と呼ぶのであれば、もうちょっと面白い取材をやりたいなあって思うようになりました。

 そして日米の金融交渉の裏側を取材していくうちに、面白くなっていくんですよ。でも上司からはスクープを求められてしまう。こちらも熱くなって「スクープってなんですか?」「どういうのがスクープですか?」とケンカをするようになって、だんだん居心地が悪くなっていきましたね(笑)。

烏賀陽:まともなことに気づいた人ほど居心地が悪くなるんですよ(笑)。これは日本のマスコミの特徴ですね……辛いことですが(笑)。

 私は現場に入ったら、あまりアレコレ考えません。だって自分のいる現実が360度、24時間、365日、すべて非日常、すべてニュースなのです。残ってる「日常的なもの」が何もない。正直言って、道ばたに落ちてる子どものおもちゃだって持ち主はどうなったんだろう? と思う。これもニュースですよね?

 現場に入ったら何を取材しようか? なんて考えていない。考える必要すらない。「ネタ不足」で、あれこれ悩んで無理矢理ニュースをひねり出す悩みはない。むしろ、山のようにたくさんあるネタの中からどれを取材して、どれを書こうという悩みに苦しむ。ネタが多すぎて取材し切れないんです。

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