東京都との交渉があくまで優先、尖閣諸島地権者の思いとは?(3/4 ページ)

» 2012年07月21日 12時22分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

海外にこの問題を知ってもらいたかった

――栗原家の中で見解の違いはありますか。また、なぜ今回会見されることになったのですか。

栗原 私たちは現在4人の兄弟しか残っていません。栗原家は長兄主義、長男が継承すればいいという覚悟があり、兄が右に向けと言えばはい、左に向けと言えばはいという状況で、兄弟の中でバラバラということはないので、私が申し上げることも兄弟が申し上げることもまったく一緒です。

 それと、現在の誤解などは、実際の売買の数値だけが走っていくことにあります。実際に相続の問題とかを考えると、尖閣諸島の場合は経済評価の付けようがない状況なんですね。そこの部分は東京都も栗原家側も経済の価値としてのプラスマイナスということを今、精査している最中です。どの数字が正しいかということは双方一切発表していませんので、ただ単に損得だけの話しっぷりのものも、週刊誌などで飛び交っているので、その辺は少し誤解という部分で最初に紹介しておきたいです。

 それとこのままエスカレートしていくと、栗原家側が欲張りでこういうことをやっているようにも思われるのではないだろうかという不安がちょっとあります。

 それと、国内ではある程度知られてきていますが、海外でほとんど知られていないという問題は、日本の経済を考えると、必ずしもプラス方向ではないでしょう。先ほど、尖閣諸島の経済問題で水産資源を活用したいという話を申し上げましたが、お互いにうまくできる状況を作るためにその辺をしっかりと定着させていきたいと考えています。

 これは私一個人の見解として聞いていただきたいのですが、誤解の部分にもう1個だけ付け加えたいのは、民間だろうが国だろうが、危機の予知能力は当然備えるべきです。危機の場合の迅速な判断ってどういうことが必要だろうと考えた時、膨張国家というのは旧ソビエト連邦は(建国から)74年で崩壊、日本も(明治維新から第二次世界大戦終結までの)77年で崩壊というのがあります。膨張国家のプロセスでは非常にいざこざが起きていきますから、これは世界の歴史的なことの中でご理解いただければと個人的には思っています。

――栗原さんがこの問題の存在を外国の人にも知ってもらいたいということで日本外国特派員協会にお越しになったのは誠に適切だったと思うのですが、日本の大衆に強く訴えるために日本記者クラブでの会見も有益だと思います。今まで日本記者クラブから話に来てくれとアプローチはあったのでしょうか、もしアプローチがあれば応じる用意はありますか。

栗原 今までの40年間、海外メディアでお目にかかったのは20〜30年前にCNNだけです。今回は10社以上の海外メディアの方々がお越しいただいています。そういうことを含めまして、スタートラインがたまたま日本外国特派員協会ということになり、国内の方では各社が随時お出でいただいている関係で、日本記者クラブという形では過去現在においても一切ございません。

 そういうご要望があるなら、決して出向くことはやぶさかではございませんので、機会をとっていただければ考えさせていただきたいと思います。

――石原都知事は尖閣諸島について経済的な側面を見ているのではなく、国防という面で見ているように思います。石原都知事の考え方をどのように思われますか。

栗原 石原都知事は、私たちと約40年間くらい行き来があります。石原都知事はやはり経済活動というものがどういうものであるかということが根底にあるのではと。これは直接うかがっているわけではないですが、島嶼経済学という経済学があり、その島嶼経済学はなかなかご理解いただいていない部分が多いので、多分そこを省いているのではないかという気がします。これは私の個人の考え方です。

 島嶼経済学というのは、小さな島があります。この小さな島だけでは経済が成り立たない。そこで、その周辺の海を含めた部分で考えるのが島嶼経済学です。島単一では経済効果が低いですが、その周辺の海を考えた時にマクロ経済の原理になります。島嶼経済学というのが世界どこでも成立しているはずなので、1回ご確認いただきたいのですが、多分都知事はそこを言いたかったんだろうと思いますが、ほとんど知られていないので、時間を省いたのではないかと私はそんな感じがします。

 島が小さくて、周りの海が必要だと申し上げている中に当然水産資源ということがあるのですが、例えばリゾート地にした場合に海浜があったりと、例えばハワイ島がいい例ですね。そういう部分を考えていただくと島嶼経済学をご理解いただけるかなと思います。

 先ほどの誤解の部分というのはこの部分を含んでいるんですね。そういう考え方もあるのかとご理解いただければと思います。偉い人というのは、面倒くさいからそこを細かく説明しないんだと思います。それが石原都知事だったのではないかと推測します。

――2010年9月に発生した尖閣諸島付近での中国漁船と日本の巡視船との衝突事件について、どのように感じられていますか。

栗原 2010年9月の衝突事件はよく覚えています。まもなく海上保安庁のある方からビデオがリリースされた(YouTubeにアップされた)こともよく覚えています(参照記事)。当初はそういうビデオなどの映像を出さないことになっていたようでしたが。

 私は尖閣諸島にほとんど海上保安庁の船で行き来していたのですが、海上保安庁の人たちは自分たちの領海を守るために、必死に活動している方々なんですね。(ビデオが)流れた行為自体は賛否両論でどちらがいいかは分かりませんが、いずれにしてもあの事件は起こるべくして起きたのか、故意的に起きたのかという判断は私にはできません。ただ、起きた結果で言った場合にはあまりよろしくない状況だったのではないかと。すなわち船尾にぶつけているということですね、船では船尾にぶつけるのが一番危険です。

――衝突事件そのものが犯罪だと思いますか。

栗原 起きた結果で判断はできないと思います。そういう風に思う方もいらっしゃるかもしれませんし、偶発的と考える方もいるかもしれません。私は現時点ではどちらとも答えられないということです。ぶつかるまでの映像を見ておらず、ぶつかっているところしか分かっていないので私は判断できません。

衝突事件の動画をYouTubeにアップした一色正春氏も2011年2月に日本外国特派員協会で講演を行った

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