「日経VS. 文春」騒動の裏にある、週刊誌の取材力相場英雄の時事日想(1/4 ページ)

» 2012年07月19日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先週、大手新聞社と老舗週刊誌の間で、大きなトラブルがあったことをご記憶の向きが多いはず。新聞社トップのスキャンダルを週刊誌が報じ、新聞社側が激怒。週刊誌を発行する出版社を訴える方針を示した。事の真偽は別にして、今回は週刊誌の機動力と取材力の凄(すさ)まじさにスポットを当ててみる。

日経VS. 文春

 先週、私のもとに数人のフリー記者や編集者から電話が入った。

 「大手新聞のトップの愛人スキャンダルが載るらしい」という噂が広がり始めていたのだ。

 「どこの新聞社のスキャンダル」で、「どこの媒体に載るのか」というのが問い合わせの中身だ。仮に噂が本当ならばメディア界を揺るがす一大スクープ。ライバル誌に“抜かれる”ことを警戒したフリー記者、編集者の慌てぶりは凄まじかった。

 だが、このところ小説の仕事に没頭し、業界内の噂から遠ざかっていた私には全く心当たりがなく、そのまま数日が経過した。すると、7月10日にそのスキャンダルの中身が複数のメディアによって報じられた。

 日本経済新聞社の社長と、かつて部下だった女性デスクの間に“ただならぬ関係”があると文藝春秋の『週刊文春』が写真入りで伝えた(参照リンク)、というのだ。

 翌11日の日経本紙ではこんなコメントが掲載された(参照リンク)

本社、文藝春秋を提訴へ 事実無根の記事で名誉毀損

 日本経済新聞社は事実無根の見出し・記事で名誉が傷つけられたとして、週刊文春を発行する株式会社文藝春秋などを近く提訴します。

(略)

 喜多社長は自宅が遠距離のため東京都内で大規模マンションの一室を借りており、文春側は社長滞在中にそのマンションに女性デスクが訪問したと指摘しています。取材に応じた社長は、そもそも訪問を受けた事実はないこと、指摘された日は妻と一緒だったことなどの反証をあげ、情実人事も含め全くの事実無根だと説明しました。

(略)

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