「神社や寺の楽しみ方を教えてください」――3人の“寺社ガール”に聞く郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)

» 2012年07月19日 13時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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寺社ガールNo.3:神様を“ここ”に呼ぶ場

「嫌なことがあったら友だちに『きいてよ』とお願いしますよね。でも、また同じようなことで迷惑をかけてしまう。本に解放を求めても読み続けないとだめ。自分だけで何とかする場がほしい。それが神社なんです」

 日本画を描く神社作家の瑠璃白(るりびゃく)さんは、かつて身内の不幸と辛い人間関係、仕事上の難題が重なった。何かを求めて自宅近くの産生(うぶすな)神社にお参りした。鳥居をくぐると心がリセットされた。その後、まるで誰かに描かせられるように「降りてくるもの」を感じて1枚の絵を描いた。「これは出てますね」とある人から言われた。それ以来、神社を描こうと決めてイラストレーターから日本画家になった。

うふふ 瑠璃白さんと亀戸浅間神社でお参り

「神社は入りやすいのです。拝観料もないところがほとんど。お布施もなし。布教もされません。でもおみくじはぜひ引いてください。たった100円で生きるヒントがいただけます(笑)」

 おみくじにはそのときの体調や心模様が現れる。凶ならむしろありがたく、転ばぬ先の杖として気を付ける道しるべにしよう。さて、神様と上手に付き合うにはどうしたらいいでしょうか?

「恋と同じ。好きな人は(胸をさして)すぐにここに呼べるでしょう? でも好きな人を追い過ぎると逃げられる。神さまも同じで信じながらも一歩引くのが大事です」

 人は不幸だと思うからいろいろ手を出し、恋も定まらない。信じて一歩引く。「神さまのおそばで働けたらどんなにいいことか」と思えば心安らかになる。東日本大震災後、跡形もなく流された氏神さまの跡地に、ペットボトルに入れられたお賽銭があったという話もあった。苦しいときこそ、そばに暮らしたい、祈りたい人がいる。

うふふ “神社を描く”神社作家、瑠璃白さんの作品

心を水平にする錘り

うふふ

 ここまで書いて、私はあらためて近所の神社に訪れた。自宅から200メートルほどの小さな稲荷神社だ。

 普段は何も感じないのだが、なぜか近づくだけで心が穏やかになった。鳥居の向こうの狐が「どうだね?」と首を傾げた(と感じた)。境内の木々が心を自然にしてくれた。素直にたおやかなことを書きたいと思った。

 どうやら私は神社や寺を「色眼鏡」で見ていた。天皇へ続く神さまの歴史や、宗教やしきたりというイメージが邪魔をしていた。だが3人に聴いて、寺社を前より素直な目で見れるようになった。きっと「寺社ガール効果」だ。だがそれでいい。神さまとはあくまで概念上の産物。人がいるから存在する。信じる者が救われるのが御利益(ごりやく)であり、「信心深い企業」もそれを上手く利用して利益(りえき)を引き寄せているともいえる。

 寺社を「心を水平にする錘り(おもり)」として使わせてもらおう。そこから大きな視点で社会を観る。人間を観る。美しいものや、自分らしい生き方に気づく。自分が本気になれる仕事を決める。ご近所や会社のすぐそばで、自分が自分になれる場所がある。

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