「神社や寺の楽しみ方を教えてください」――3人の“寺社ガール”に聞く郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2012年07月19日 13時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

寺社ガールNo.2:奈良のお寺と自然と

うふふ 井出留美さんとセカンドハーベストの近くの公園のほこらで

 食で人を救う井出留美さん(セカンドハーベスト・ジャパン 広報室長)の寺社体験は奈良で深まった。

「奈良は寺社が点在しているので、短期間に全部は行けません。修学旅行で法隆寺には行きますが、その隣の中宮寺にはほとんど行かないですよね。でも、そこには世にも美しい菩薩さまがいるんです」

 世界三大微笑像の1つ、半跏思惟像(はんかしゆいぞう)はたおやかで包容力でいっぱい。見ているだけで癒されそう。

「自分にとって、相性の良い仏像と悪い仏像があります。学生時代は、仏像をモノとして見ていました。でも今は、仏像を作った人が背後に感じられ、仏さまと対話ができるような気がするんですよ」

 “対話”という言葉にハッとした。不肖私は「仏像と対話する」と思ったことがなく、言葉は悪いが「仏像は布教のツール」くらいに思っていた。だから対話が新鮮に響いた。仏像が語りかけてくるものを聞きたい。いや聞こえる心を持てたらいい。

 父の転勤で札幌から福岡まで転居続きだった井出さんは、自然がありおおらかな福岡が好きになり、高校で転校した先の都会になじめなかった。大学選びでは3つの条件をつけた。興味のある食物学科があること、国公立であること、東京でないこと。それは奈良女子大だった。部活では長刀やお琴、古美術に惹かれたのに、なぜか体育会硬式テニス部へ。だが休講になると大学近くの興福寺に行き、テニスのない日には大和三山の寺を巡った。

「お寺巡りは緑と花も楽しめます。矢田寺のあじさい、般若寺のコスモス、長谷寺は牡丹、室生寺なら紅葉。世界最古の道と言われる山野辺の道も気持ちがいいし、西大寺の大茶盛は大きなお茶椀でびっくりしますよ」

 寺社にある自然は「ダテではない」。実は訪れる人の心をほだし、やさしく抱擁する“舞台づくり”。その草木の手入れは「おもてなし」であり「仏心」なのだ。

「ある人に、『井出さんは木綿の人ね』と言われたんです。京都なら絹の人かもしれませんけど、奈良には素朴で自然な良さがいっぱいあります」

 社会貢献のために一流企業を2度も辞めた井出さんにとって、寺社とは「世の中といかに対話するか」考える入口でもある。自分に素直になれば、自然と社会に貢献する仕事をする。それがその人をつくる。

うふふ 中宮寺の半跏思惟像

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