“図解”から“図観”へ――マンダラに学ぶ情報の視覚化(2/4 ページ)

» 2012年07月18日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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「リスクとは何か」について考え表現せよ

 そうした図解表現としての「マンダラ」を理解するために、演習を通し、段階を踏んで「マンダラ」に迫っていこう。さて、演習テーマは──「リスクとは何か」について考え、図で表現せよ。

 「リスク(risk)」は広い概念で多義的である。しかも外来語である。しかし、日本のビジネス現場では、すでに日本語並みに定着している。もちろん、英単語の“risk”は「危険(性)」という意味であるが、この演習はそういった字義的な説明を求めるものではない。

 あなたの事業、あなたのキャリア・働き方にとって、「リスク」(あるいはリスクを取ること)はどんな概念か? それを考え、考えたことを表現しなさい──というものだ。

 まず、「リスク」を自分の言葉で定義してみよう。定義をするためには、いろいろな角度からその概念を見つめ、抽象度を上げて本質を引き抜いてくることが求められる。

 図2の列挙は、私が行っているワークショップで出てきた具体的な定義の一例だ。このように「リスク」という概念は、人により多義的である。

 個人で書き出したカードを1枚のボードに貼り出して、グループやクラス全体で共有すると、いろいろな気付きや創発が起こる。抽象的な思考は、数式の解を求める作業ではないので、唯一の正解値はない。どの答えにもその人なりの真実が含まれている。

 次に各自から出たこれらの定義を参考にして、グループでさらに洗練させた定義を1つこしらえる。ここでは先ほどの故人でやった定義より一歩も二歩も本質に近づく表現が出てくる。例えば、A班、B班の定義はこのようになった。

 (A班)「リスク(危機)とは、危険(danger)と機会(chance)の両面を持つコインである」。

 (B班)「リスクとは、挑戦に伴う影である。挑戦をしない場合にも、同じくリスクという影が伴う」

 なるほど、両案とも非常に本質的な視点が入ってきたように思う。A班の定義は、リスクが一般的に危険性だけを考えるのに対し、実は機会の面を合わせ持つという両面性をとらえた。そしてまた「コイン」というメタファー(比喩)を用いている。これは誰もが誘惑される価値を持つことを含意するものだ。

 B班の定義もリスクが持つ両面性をとらえている。挑戦することのリスクと、挑戦を避けることのリスクである。また「影」という語彙(ごい)も効いている。つまり、リスクは挑戦という本体の大きさに比例して変わることを言い得ている。

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